2003年01月08日(水)  浪漫主義狼少年と現実主義現金少女。
かの昔、「狼だ! 狼が来たぞ!」と懲りもせずに叫んでいた少年への切ない同情。
村人はたいてい僕の嘘に騙されてしまうのに、真実の言葉は
 
「あなたは誰にでも言ってるから」
 
いつも嘲笑と共にかわされてしまう。
こんなにキミのことが好きなのに、愛してるのに、と揚々と叫ぶほどに
その言葉は重みを無くし、慢性化され、意味が失われてしまう。
 
僕は焦る。意味も無く焦燥し、混乱する。
本当に愛しているのに、伝わらない想いに苦悩する。
複雑な迷宮の出口には嘲笑うキミが立っている。
 
「私は現実主義で合理主義なの」
 
キミはロマンシズムを真っ向から否定する。
ロマンシズムから抽出されるあの独特の麻薬を拒絶する。
僕は右手に注射器を持ち、左手に自ら針を刺してその効能に酔っているというのに。
 
「そういうのを恋愛中毒っていうのよ」
 
なるほど。ん? なるほど? 駄目だ、納得しちゃいけない。
相手のペースに巻き込まれちゃいけない。リアリズムになんかに負けちゃいけない。
対極するもので挑むしかない。浪漫主義を声高々に掲げ、キミをいつか、僕のものに。
 
「共働きはイヤだからね」
 
気付いてくれ! リアリズムの悲劇はそこにあるんだ! 共働きとか専業主婦とか! その現実的な響き!
よしてくれ、その艶っぽい唇から、雨露さえ受け止めんとする滑らかな舌から、そういう言葉を発しないでおくれ!
 
「お金欲ちぃの」
 
金? M・O・N・E・Y MONEY?
なんだ。いったいそれに何の意味があるんだ!
言っとくけどね、この国に財務省なんて存在しなかったらインフレもデフレも存在しないんだ。
わかるかい? 僕たちに必要な省庁は法務省だけで充分なんだ。
婚姻届をね、受理してくれる場所があったら、富士山の火口でも月の裏側にでも行ってやるよ。
 
法務省に月の裏側。立派なリアリズムとロマンシズムの共存じゃないか。
だから通販の! カタログなんか見ずに! 僕を見つめてくれ!
こうなったら香水もコスメもパンティーもみんなリアリズムだ! 畜生!
 
キミさえ傍に居てくれたら、それだけで生きていける。
これは過言じゃないし誇張でもない。真実なんだ。
共働きなんてさせないから、お金もいっぱい稼ぐから、香水もコスメもパンティーもいっぱいプレゼントするから
 
この卑屈な狼少年と、どうか、結婚を考えてくれないだろうか。

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