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| 2003年01月05日(日) 背徳の合理化。 |
| 「僕は明日、7時に起きるんだ。7時に起きて露天風呂に入るんだ。雪も積もってるし、キミも入ればいいよ」 午前3時30分。僕はまだ起きていて窓の外を眺めながらタバコを吸っている。 深々と降り注ぐ雪は深夜の暗闇を白く染めている。 室内の暖房は30度に設定されているけど体が小刻みに震えているのは僕が衣類を一切身にまとっていないからであって、 着ればいいんだけど、浴衣や下着があらゆるところに散乱してしまって、部屋の中は外の景色より暗くてうっすらとしかわからない。 「はいはい勝手に起きて勝手に入って。私は寝てるからね」 彼女は布団に包まり小さな顔だけを出している。 今にも眠ってしまいそうな弱々しい声は、早起きの決意と睡眠の誘惑とを葛藤させる。 僕はタバコを消して残りのビールを飲み干して彼女の背中に寄り添うように眠った。 コツコツコツ。 「ほら、起きて。7時よ。温泉入るんじゃないの」 彼女が僕の頭を小突きながら言う。早朝7時。眠い。温泉? あと30分。 午前7時30分。「起きないの?」彼女の催促。僕はまだ起きない。 午前8時。「朝ご飯行くよ。ほら、支度して」コツコツ。僕の頭を小突く。 彼女はもう洋服に着替えている。僕はまだ浴衣を着ている。 夜は部屋食だったが、朝はバイキング。別棟のレストランへ行く。 僕の頭はまだ夢の中で、今思い返してみても何を食べて、何を話したか覚えていない。 朝陽は窓の外の銀世界を嫌味なほどに反射している。僕は目を細めて彼女を見る。 コンタクトを外して眼鏡をかけている彼女は、とても落ち着いて見えて、 コーヒーを飲まずにミルクを飲んで、パンを食べずにご飯を食べていた。 露天風呂に入る頃、ようやく目が覚めてくる。 子供たちが真っ裸で雪ダルマを作っている。僕は微笑みながらその温かくて冷た過ぎる光景を眺める。 僕たちの背徳に満ちた1泊2日の温泉旅行はこうして終わった。 初雪という特別な舞台設定を施されたこの旅行は、実世界との隔たりを作り上げるのに充分過ぎて、 こうして1人でキーボードを叩いている今も、まだ夢から抜け出せないでいる。 まだ僕の頭は午前7時のままでいる。 |
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