2002年12月13日(金)  悪癖。
昨日の続きは深夜1時の場面から。
 
「ちょっとトイレ行ってきます。明日仕事なもんで」
と明らかにアルコールが体内を循環している荒唐無稽な言い訳で
2次会のカラオケを抜け出し、トイレには行かず、道路へ出て弱々しく右手を挙げてタクシーを停めようとしたその時
 
「抜け駆けですか」
と背後で師走の夜風よりも冷たい声。振り向くと、事務のお姉さん。
「いや、酔っ払っちゃって、夜風にでも当たろうかなって」
「ほら、タクシー来たわよ」
「いや、違いますよ。僕はただ夜風に……」
「いいのよ。どうせ帰り道一緒だし」
 
僕の言い訳というか、丸出しの嘘はことごとく見破られて
帰り道が一緒だという理由で同じタクシーに乗る。
 
僕は無言で俯いている。事務のお姉さんは黙って窓の外を見ている。
僕が無言で俯いているときはママにご飯を抜かれたときかひどく酩酊しているとき。
帰ってすぐトイレで1回吐いて熱いシャワーを浴びてそのまま暖かい布団に寝てしまいたかった。
 
俯く僕、窓の外を見る事務のお姉さん、寡黙なタクシー運転手。
生まれも育ちも違うこの三者に共通する事項はただ1つ。沈黙。
 
「……。あの……。お茶でも飲んでいきませんか?」
 
僕の苦手なものは、気まずい沈黙で、悪い癖は、その沈黙を打破するために思ってもいないことを口走ってしまうことで
 
「うん……そうする」
 
そして僕が口走った「思ってもいない」ことは、たいてい相手が「思っている」ことで
僕が得意なことは、自分で自分の首を締めることなのだ。
 
アパートの前で一緒にタクシーから降りて、一緒にアパートの階段を上がる。
深夜1時30分。明日は仕事。僕の睡眠時間の最低ラインである6時間は、もう無理だ。
 
「散らかっててゴメンなさい。ちょっと待っててね、お茶いれますから」
 
「お茶でも飲んでいきませんか?」と誘った手前、お茶をいれないわけにはいかない。
そしてお湯が沸く間に葛藤する。
 
性欲か睡眠か。
 
迷わず後者!僕は淡白なんだ!いや、淡白ってわけじゃないけどひどく酔っているんだ!
熱いシャワーを浴びて暖かい布団を頭まですっぽりかぶって眠るんだ!
 
だけど僕の悪い癖は、思ってもいないことを口走ってしまうことで
 
その「思ってもいない」ことは、たいてい相手が「思っている」ことなのだ。

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