2002年12月06日(金)  僕の能弁。
早朝7時。木ノ下さんと待ち合わせ。今日は研修。内容は不明。
昨日は結局研修の内容を聞き出すことができなかった。
 
優しくて穏やかな事務のお姉さんまでも
「内容?自分でちゃんと木ノ下さんに聞いてみなさいよふふふ」
と言うのでもう誰にも頼らないで生きていこうと決めた。
 
そして何も聞き出せないまま同じ車に乗って研修場所へ。
「あぁ〜ユウウツ〜。今日の研修ってすごい難しそうじゃなかった?」
「うん。あ、あぁ。そうですよね。なんか自信ないですよ」
なんて当り障りのない会話に終始する。
この知ったかぶりも研修場所に到着すれば解決する。
時間と虚偽と隠蔽と罪悪感との闘い。僕は自分と闘ってばかりいる。
人生の一人相撲で一人上手投げで一人黒星だよまったく。
 
研修の内容はユウウツになるまでもなく、淡々と過ぎる。
いざ発表となると日頃生理云々に関わらずあんなに気が強い木ノ下さんも
「ねぇ、あなた言ってよ。ねぇ、お願いだから、ねぇ」
とやけに弱気になってるので、多分、男性はそういう女性の不意の弱さに惹かれてしまうらしく
僕も男らしく「任せてください。こういうときは胸を張って適当なこと言えばいいんですよ」
なんて言ってポストまで新聞を取りに行くようにゆっくりと立ち上がり
コホンと小さく咳をして胸を張り適当なことを言う。
 
僕の得意技は、こういう状況でも常にいい加減でいられるということだ。
思っても感じてもいないことを実に能弁に喋ることができる。
 
本心でないことを、本心であるかのように、
虚偽であることを、真実であるかのように、
感情を交え、身振り手振りで、聴衆の気を向ける。
 
発表が終わり拍手をもらう。僕は安心も安慮も満足も満悦も充足もしていない。
ひたすら何かを探している。本当の僕を探している。本当の僕が言う本当の意見を、真実を探している。
 
木ノ下さんも小さく拍手をしている。
大きな拍手をしないのは、僕がいい加減な能弁を垂らしているということを知っているから。
 
木ノ下さんは僕の道化を初対面で見抜いた最初の人だから。

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