2002年11月06日(水)  桃源郷のような頬とビールとメール。
新婚の友人の家へ遊びに行った。
新築の町営団地のチャイムを押すと、友人の奥さんと生後5ヶ月の赤ちゃんが出迎えてくれた。
 
「いらっしゃい」
奥さんが言う。赤ちゃんはニコニコ笑っている。ニコニコニコニコ笑っている。
「うぉーー!!可愛いーーっ!!」
僕は団地の玄関で大声で叫ぶ。
「ま、あがれよ」
友人が奥の部屋から出てくる。
僕はそれを無視して桃源郷に浮かぶ雲のような赤ちゃんの頬をプニプニ触っている。プニプニプニプニ触っている。
 
「はいお土産」
僕は赤ちゃんに目線を釘付かれたまま、無造作にお土産を渡し、
出きる限りのおかしな顔をして赤ちゃんを笑わせようと必死になる。
 
「わっ、なんだよこれ」
友人はお土産の袋を開けて驚いた声を挙げる。
「いや、赤ちゃん喜ぶかなと思って」
僕は相変わらず玄関で赤ちゃんのおでこを撫でたり髪の毛をベッカムヘアにしようと必死になっている。
「こんなんで喜ぶわけねぇよ」
友人は笑いながら応える。友人が一番喜んでいる様子。
 
お土産の中身はモアイの形をしてティッシュケース。モアイの鼻の部分からティッシュが出る仕組み。
「ま、お前らしいグッドチョイスだ」
その言葉を聞いてようやく僕は靴を脱いだ。
 
「今日は憐れな独身男性の為にオレの奥さんが晩飯を作ってやったんだ」
友人は自分で作ったわけでもないのにやけに胸を張って言う。
「ホ、ホント!わ、すげー!すげーなー!」
僕はこういう時は役者になれる。
 
刺身とエビフライとサラダと豆腐ハンバーグ。
 
豆腐ハンバーグは昨日も食べたような気がする。流行っているのかしら。
「それじゃあ乾杯」
僕と奥さんはビールで乾杯する。
「先に乾杯すんなよ!」
友人は泣き出した赤ちゃんを一生懸命あやしている。
 
「貸して」
奥さんは友人に赤ちゃんを渡すように促がす。友人は素直に赤ちゃんを渡す。
赤ちゃんは素直に泣き止む。
「 ……。」
友人は乾杯もせずに残念そうに俯いてビールを飲む。
 
「う〜ん。お前も一丁前のパパになったんだなぁ」
僕はかつての高校時代の同級生に向かっていう。
「お前もそろそろ落ち着くべきだな」
友人が人生を悟ったような口調で呟いたその時
 
>こんばんは〜( ^3^)/ ヒマだよ〜(T-T) 遊びに来なぃ?
 
僕の携帯にホステスからのメール。一瞬にしてほころぶ表情。
 
落ち着くにはまだ早い。

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