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| 2002年11月04日(月) 48時間の恋人6。―――エピローグ |
| 現実に戻る。 朝起きて仕事をして部屋に帰って決まって風呂上りに友人から電話が来る。 「今からご飯食べに行かない?」と。 「さっき風呂に入ったばかりなんだ」と言うと 「それはあなたの勝手じゃない」と言われる。この反論は納得してもいいものか。 その料亭は、市街地の奥深くにひっそりと佇んでいた。 歴史ある門構えに木彫りされた料亭の名前。 歴史ある女将さんに部屋を案内され、僕と友人3名は座敷に腰を降ろす。 「あなたはね『和定食』にしなさい」 「これ、多いよ。あんまりお腹空いてないんだ」 「バカね。『和定食』はね、たった300円高いだけで『さしみ定食』に天ぷらがついてくるのよ」 僕の隣に座った友人は得意気に言う。 現実に戻ってから僕はあまりお腹が空いていない。 「食べきれなかったら私が食べてあげるから」 友人はやはり得意気に言う。マフラーを外しテーブルに両肘を立てる。 「じゃあ私『千成御膳』にする」 テーブルの向かいに座っていた友人が言う。 『千成御膳』の写真が載っているメニューを見る。写真に収まりきれない程の料理の数。 僕は現実に戻る戻らない以前にこんな豪勢な料理は食べられない。 テーブルにそれぞれの料理が運ばれてきて食事は進む。 話題はここ数日音信不通になっていた僕についての話題。 空白の48時間の話題。 「限定された恋をしていたんだ」 なんて文学的に言ったとしても一笑されるだけなので「別に何もなかったよ」と言った。 もう、それは終わってしまったのだから。料理が少々高いとしても、もう、ここは現実なのだから。 冷たい雨の中、店を出てカフェに寄った。 レモンコーヒーを飲みながらカフェの入口を見ていたら、1組のカップルが入ってきた。 その女性は一度逢った事のある女性で、何かの折にお酒を飲んだような気がしたけど いつ、どこで、どうやってグラスを交わしたか覚えていない。 その女性もそう考えているようで、僕たちは何度か視線が合ってその度に記憶の糸を辿るというあてのない作業を強いられた。 しばらく考えて、記憶の糸を切って、視線のシャッターを降ろした。 部屋に帰るとメールが届いていた。 >ただいま。本当にありがとう。最高の2日間でした。 雨は静かに降り続けていた。 洗濯機は来たるべき稼動を浴室の隅で待ち構えていた。 |
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