2002年10月26日(土)  窮屈な世界。
僕は小さい頃、神経症的傾向があって
 
例えば左に1回転周ったら右に1回転周り直さなければならないとか
通りすがりの人の体の一部が当たったら、その人を追いかけてでも体の一部を触れ直さなければならないとか
寝る前に家の鍵が閉まっているか何度も確かめたりとか
漫画の3巻から読み始めるなんて言語道断とか
 
とにかく僕の周りには僕が作り上げた意味のないルールが多すぎて
僕はそのルールに逸れることなく忠実に対処することで僕自身を守ってきた。
僕自身が創りあげた窮屈な世界の中で幼いながらも必死に生きてきた。
 
臨床心理学的にいうと、僕は強迫神経症であり、主な症状は確認強迫だったといえる。
今だからいえる。
大学で心理学を学び、精神病院の看護師となり、神経症のメカニズムが理解できた今だからこそいえる。
 
幼い頃の僕は、そんなこと知らなかった。
右に1回転周れば、右に1回転周る前の僕ではなくなってしまう。だから左に1回転周り直す。
どうしてそんなことするのかわからない。わからないけど僕は僕ではなくなってしまう。
 
大人の目を見て話すことができない。僕の思考が伝わっちゃうから。
だから僕は大人と話すときは眉毛を見ながら話すように練習する。
大人の眉毛には害はない。どうしてだかわからない。わからないけどとにかく眉毛は大丈夫だ。
 
僕は家の鍵を掛けたかすぐ忘れてしまう。掛けたような気がするけど、掛けてないような気もする。
多分……掛けてない。夜中に起きる。家の鍵を確かめる。お母さんが起きる。
「何やってるのよ」と言う。「なんでもない」と言う。なんでもないんだ。
 
今日は赤色を見ないようにしよう。赤色を見ると、多分、頭から血とか出ちゃうんだ。
どうしてだろう?わかんないけど、―――ただそんな気がするんだ。
だから今日は赤色を見ない。信号機の前では俯いて地面を見るようにする。
 
本を読んでいる。一行飛ばしたような気がする。読み直す。また一行飛ばしたような気がする。
繰り返し同じところを読み直す。先に進めない。どうしてだろう。
 
僕は時々幼少の頃の自分を思い出して、その窮屈な世界を思い出す。
僕はその世界の中で、歪んだ秩序に身を委ね、自分が傷付けようとする外界を隔てる壁を作ってきた。
 
あの頃が、あの世界が、僕の1番辛かった時代だったということを思い出す。

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