2002年10月07日(月)  気紛れな運命の天秤。
正確な日時はわからないけど、僕は以前、親友を1人失った。
 
当時、僕には好きな女性がいた。
明朗活発で無邪気で笑顔が可愛い女性だった。
少し下品な笑い声を挙げることがあったけど、その欠点も愛嬌という言葉であっさりと包み込まれていた。
 
当時、僕には親友がいた。
どこに行くにも一緒で、時々男2人で旅行に行った。
僕たちは野球が大好きで全国のドーム球場を回ろうという健康的な野望があった。
東京ドームと福岡ドームに行った。
次は名古屋ドームに行こうと約束して、それは果たされることがないまま
2人で福岡ドームに行って1年後に僕は1人で名古屋の地に立つことになった。
 
当時、親友にも好きな女性がいた。
才色兼備でオシャレで瞳の大きな女性だった。
カラオケがあまり上手くなかったけど、その欠点も愛嬌という言葉であっさりと包み込まれていた。
 
そして僕たちはあまりにも気が合い過ぎて、同じ女性まで好きになるという
典型的な三角関係を構築することになる。
 
その典型的三角形のそれぞれの点に位置することになった3人は
「友情と恋愛」というありきたりなテーマの元に、90年代のドラマのようなありきたりな展開を経て、
それぞれの思惑が秤にかけられ、時に疑念が増幅し、嫌悪にさいなまれ、決心が導き出され、
それぞれの運命の日を迎えた。
 
僕は告白することになる。気紛れな運命の天秤はその時「恋愛」に傾いていた。
雨の日のファミレス。
食後に10月の雨のように薄くて無感情なコーヒーを飲みながら僕は後戻りのできない別れ道に立った。
彼女はただ黙っているだけで「あとでメールするね」と言って明言を避けた。
メールを見るまでもなく僕の敗北は決定した。
 
1年後。2002年10月6日。
僕はツタヤの駐車場に車を停めた。そして僕の車の横に白い大きなステップワゴンが停まった。
ステップワゴンのドライバーと僕の目が合う。
この時もあの日のファミレスのときのような雨が降っていた。
 
ステップワゴンのドライバーは、過去に夢を共有したことのある人だった。
「一緒に全国のドーム球場を回ろう」
僕たちの夢は果たされなかった。運命の天秤は2度と逆に傾くことはなかった。
 
僕たちは形通りの会釈を交わした。
過去に僕と夢を共有したことのある親友の助手席には
過去に僕の愛を提供しようとした女性が座っていた。

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