2002年09月20日(金)  スイッチ。
昨夜、午前2時、僕はソファーに寝転び小説を読んでいた。
小説を読むのは休日前の深夜が一番適している。
明日のこととか、職場のこととか考えずに小説の世界に身を浸らせることができる。
風1つない静かな夜。時々アパートの下を自動車や救急車が通る音以外は何も聞こえない。
小説の世界だけに神経を集中させて静かにページを操る。
 
ドンドンドンドン!
 
突然アパートのドアを強くノックする音。
僕は驚いてソファーから身を起こす。ドアが壊れんばかりの強いノック。
 
ドンドンドンドン!
 
隣の部屋まで聞こえそうな音。4回、一呼吸、4回、続けて3回。
ドアの向こうの誰かは、明らかな怒りと憎悪を込めて僕の部屋のドアをノックしている。
足音を殺してキッチンを歩き、ドアの前に立つ。
ドアの向こうまで聞こえそうなほど心臓が高鳴る。微かに両足が震える。
誰だ?誰なんだ?何が、バレたんだ?その前に僕は何か悪い事でもしたんだろうか?
 
ドカッ!!
 
ドアの向こうの誰かがドアを強く蹴った。
僕のどこかのスイッチがOFFになってどこかのスイッチがONになった。
その瞬間僕はドアを開け、その「誰か」を追いかけながら大声で罵倒を浴びせた。
深夜2時にドアを強くノックされた挙句蹴られるなんて筋合いは、ない。
不安も危険も省みず僕はその「誰か」を捕まえた。
そして正面から膝関節を逆の方に思い切り蹴った。
 
アパートの廊下にうずくまる「誰か」は僕の見たことのない「誰か」だった。
風貌からして(ダボダボのTシャツとズボンと薄汚れたスニーカーと必要以上に染められた茶髪と悪趣味なピアス)
その「誰か」は10代後半か、高校生に見えなくもない少年だった。
 
僕は膝を蹴ったときとは対照的に、穏和に話し掛ける。お前は、誰だ。
「す・すいません……。部屋を、間違えました」
少年はまるで万引きが見つかってしまったかのように弱々しく話す。
「部屋を間違えたって、いったい何処に何をしに来たんだ」
僕はなおもうずくまっている少年に話し掛ける。
「ジュンが殴られたって聞いたから……」
 
ジュン?僕がジュンについて心当たりがないか考えているとき
突然僕の部屋から3つ隔てたドアが開いてこの少年と同じ歳くらいの風貌と表情をした少年が歩いてきた。
見たこともない少年だった。一緒のアパートにこんな少年が住んでいるなんて知らなかった。

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