2002年09月08日(日)  意地。自尊心。禁句。過去。
「ねぇ、今度の休みは?」
 
先日返してもらった携帯電話から彼女の声。
携帯電話は予想通り昔の彼女が持っていた。
返してもらうときに
 
「随分有意義な生活を送ってるみたいね」
 
と嫌味を言われた。多分、メールを読まれたんだと思う。
自分のメールを勝手に読まれて怒らない人はいないと思うけど、僕は怒ろうとは思わなかった。
僕の今立っている場所の現状を、決して会話には出てこない生活を、
誰かから僕に届いたり、僕自身が誰かに書いたメールによって彼女が理解してくれればそれでいいと思った。
 
「ねぇ、今度の休みは?」
 
僕は彼女の言葉で我に返る。最近やけに頭がぼんやりする。
意味のないことや答えの見つからないことを考え過ぎかもしれない。
 
「明日と、木曜日」
「そうなんだ。じゃあ、次はどっちの休日に会える?」
 
この言葉で彼女は僕を試そうとしている。
明日と木曜日の休日。彼女が待っているのは「どっちの日も会いたい」という言葉だ。
僕たちのような関係(昔の彼氏と彼女)では「どっちとも会いたい」とか「ずっと一緒にいたい」とか
そういう言葉は無闇に使ってはいけない。
状況をわきまえた慎重な言葉に終始しなければ、たった一言で取り返しのつかないことになりかねないのだ。
 
「どっちでもいいよ」
「どっち?」
「明日でも木曜日でもいいよ」
「だからどっちがいいの?」
 
彼女は意志の決定を僕に委ねることによって、自分の優位を保とうとする。
明日会おうと言ったら、木曜日も会うことになるだろう。
 
 
 
                     ―――――●―――――
 
 
  
お互い、会いたくてたまらないのに
 
別れてしまってからも意地を張り合ってしまう。
 
だけど
 
「会いたくてたまらない」って言葉はもはやタブーと化しているから
 
僕たちは懸命に他の言葉を探そうとする。
 
かつて「愛してる」と安易に口にしていたように
 
安易に口にすることができて、相手の心を直接触れる言葉を
 
探そうとする。懸命に。彼女に悟られることなく。僕に悟られることなく。
 
そんなことはお互いわかっているのに
 
それでも平然を装って、悟られないように、悟られないように
 
過去を繰り返さないように。取り戻さないように。

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