2002年09月02日(月)  合言葉。
最後に会ったのはいつだっただろうと思い、昔の日記を読んでみたら
今年の1月に6年振りに再会したことが書いてあった(2002/01/14『成人――式。』)。
 
そして昨夜、再び彼女は僕の目の前に現れた。
電話もメールも、部屋のノックもせずに僕の目の前に現れた。
「こんばんは」
「やぁ、こんばんは」
僕たちは昨日も会って一緒に食事にでも行ったような口調で挨拶を交わす。
 
「ちょっと待ってて、お茶いれるから」
僕は彼女を部屋に入れ、キッチンで体勢を整える。
深呼吸をして、――とりあえず――パソコンの電源を切って――やむをえず――携帯の電源を切る。
 
「わぁ、かわいいー!」
部屋から突然彼女の声が聞こえる。彼女は昔のアルバムを引っ張り出して
若かりし僕たちの写真を見ていた。
「可愛いねぇ。やっぱり髪の毛短い方がいいかなぁ。ね?どう思う?写真と今の私とどっちが可愛い?」
 
昔からそうなんだけど、彼女は自分のことを可愛い可愛いと胸を張って言っていた。
確かにそう思うんだけど、そこが彼女の難点でもあった。
 
「この頃よりホッペがスイカみたいに膨らんで今の方が可愛いよ」
「もう、バカ!」
「僕は?若い頃と比べてどう?」
「あなたは……今も昔も足が短い」
「……」
 
昔からそうなんだけど、彼女は僕のことを足が短い足が短いと胸を張って言っていた。
確かにそう思うんだけど、そこが僕の難点でもあった。
 
「彼女できた?」
「できたけど別れた」
「で?」
「で?って?」
「彼女のこと本当に好きだったの?」
「……」
 
僕たちは3年も付き合ってきただけあって、僕のことは何でもお見通しだった。
前回の彼女は3ヶ月で別れてその前の彼女は2ヶ月で別れた。
そして山奥に佇む生ぬるい沼の中に沈んでいるような不倫をして、
月の出と共に燃え上がって朝陽と共に冷めてしまうような一夜の恋をして、
結局、また1人――もと通り――になった。
 
「あなたは結局、呆れる程の理解がある人じゃないと続かないのよ」
同じ部屋で同じソファーに座っている過去の彼女はアルバムをぼんやり眺めながら言う。
 
「ずば抜けた独占欲と?」
「並外れの忍耐力」
「そして?」彼女が僕の方に首を傾けて言う。
「桁外れの理解力」
 
それは6年前の僕たちの合言葉だった。

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