2002年08月29日(木)  決定の選択。委ねる人、委ねられる人。
「なんで予約しなかったのよ!」
彼女は電話口で叫ぶ。僕は休日で自分の部屋にいるから電話口でいくら大声で叫ばれたって構わないけど
彼女は職場で、しかも職場の電話で叫んでいるのだから叫ばれているこちらが冷や冷やする。
 
「あなたこの前だって予約してなくて店に入れなかったじゃない!」
僕はこんなに私的な不平不満を大声で叫ぶことができる職場環境が羨ましい。
「だってほら、この前は週末だったでしょ。だけど今日は平日でしょ。大丈夫だよきっと空いてるよ」
「あなたのその根拠のない自信はいったいどこから来るのよ!空から?空から?ねぇ!空から?」
「なんでそんなに空にこだわってるんだよ。空から自信なんて降りてきやしないよ。
僕はただ今日は平日だから予約しなくても席は空いてるだろうって憶測してるだけだよ」
「そういうのは希望的憶測っていうのよ!バカ!いい加減!」
僕は受話器から耳を離す。やけにイライラしている。
これで今夜の食事で彼女が小さなバッグを持ってトイレに行ったら確実に生理だ。
 
「わかったよ。ごめん。ごめんなさい。ごめんなさいね」
「心のこもってない謝り方がムカつく」
「はいわかりました。申し訳ありません。只今早急に予約を申し込みますので
どうか気を鎮めてください」
「今夜の食事は?」
「僕がご馳走しますので」
「よろしい」
「ちっ」
「(わっ!何よそれ!)」
 
僕は受話器を切る瞬間に相手に聞こえるように舌打ちをして電話を切る。
そんなに怒るんだったら自分で予約すればいいんだ。
 
「すいません。今夜空いてますか?」
「何名様でしょうか」
「2人なんですけど」
「少々お待ち下さいませ……。はい、空いております。テーブルとカウンター、どちらがよろしいでしょうか?」
「あ、どっちだっていいです」
「それではテーブルをご準備しておきます。お料理の方は単品とコース、どちらがよろしいでしょうか?」
「どっちだっていいです。僕が決めることじゃないですから」
「はぁ……。それではお待ちしております」
 
ホッと一息の時に吐くような溜息をついて彼女に電話をかける。
  
「予約できたよ」
「ありがとー!さすが頼りになるわね!」
「テーブルかカウンターか単品かコースかとか尋ねられたけどキミが決めることにしてよ」
「あっ!私今日座敷がいいー!」
 
ちっ。予約する店間違えた。

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