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| 2002年08月25日(日) 丸書いてチョン。 |
| 所用で福岡に行っていて、今日帰ってきた。呪いをかけられたのでとても疲れている。 帰りの電車はとても込んでいて、自由席は相席せざるを得ず、 僕の隣には5歳くらいの女の子が座っていた。後ろの席にはそのお母さんと妹が座っていた。 この女の子、歳の割にとても大人しくて、窓から景色を眺めようとせず、 かといって後ろの席のお母さんに身を乗り出して話そうともせず、ずっと一点を見つめているだけだった。 「テレホン…カード…は…、…にて…はんばい…して…おります… おとくな…かいすうけん…も…、…しております」 突然女の子は独り言を始める。一点を凝視しながらしきりに何か言っている。 僕はその視線の先を探る。数メートル前方に「JR九州」の張り紙。 この女の子はその張り紙に書いてある小さな字を読んでいたのだ。 あまりにも小さいので僕には読めない。 僕は再び小説に目を落とす。女の子の独り言はまだ続いている。 窓の景色なんて最初から存在しないみたいに、周囲の張り紙の文字という文字をひたすら読んでいる。 「おおかみと…きりんさんは…ながいから…いっぱい…まほうつかいは… まほうつかいのおばあさ、おばあちゃんは…とっても…」 僕は耳を澄ます。この子は、何を言っているんだ。 そんなこと、どこに書いてあるんだ。再び女の子の視線の先を探る。何もない。 僕は再び小説に目を落として考える。何を言っているんだ。狼?キリン?魔法使い? 僕は小説を読むふりをしながらしきりに女の子が言っていたことを整理しようとする。 先述の単語に該当しそうな童話を探したり、童謡を考えたりする。 だけど狼やキリンや魔法使いが一緒に出てくる物語も歌も浮かんでこなかった。 これはこの女の子の創作だ。と思ったその時、 女の子は隣の席で僕の方をずっと見上げていて ――僕はその創作のことを考えていたのでどのくらい見上げていたのかわからなかったけど―― 僕と目が合って、ニコリと笑ってみたけど、女の子は笑い返しもせず、 ずっと張り紙を見るような目つきで僕をしばらく見つめていて 僕に向かって、指で大きな円を書いて、その円の中心にちょんと点を書く仕草をして それからやっとニコリと笑って、また前を向いた。 というわけで今日僕はとても疲れている。旅の疲れじゃなくて 多分、あの少女の呪いか何かなんだろう。 |
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