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| 2002年08月19日(月) 卑怯な男、羊を被り、今夜も私を喰い殺す。 |
| 彼は卑怯な男だ。 往々にして卑怯な男は愛想が良い。彼も例外ではない。 時に卑怯な男は、米粒に般若新経を書く職人のように繊細で 時刻表を丸暗記している鉄道マニアのように正確な記憶力を持つ。 誰よりも早く私の髪型の変化に気付き、 誕生日の午前0時にバースデーメールを送り、 服も指輪も靴のサイズまでいつまで経っても憶えている。 彼は彼自身の物差しで相手を見ようとしない。 いつでも相手の女性の目線で、相手の物差しで物事を測ろうとする。 相手の女性は、それを、価値観の相似と勘違いする。 卑怯な男は自分の価値観なんて持ち合わせていないのに。 卑怯な男は、駆け引きを好む。無意味な同情を誘う。煩悩を植え付ける。 いつまで経っても返信されないメールも、 メールの最後に書いてある意味深な言葉も、 端を切ったように、連続して書かれている愛の言葉も、 卑怯な男のなせる業。憐れな女が落ちる術。 落とされるとわかりきっていた落とし穴に自ら足を踏みいれた女は 穴に落下したときに擦り剥いた膝の傷を愛惜しそうに撫でる。自らの陶酔で傷を癒す。 きっと彼は、そんな状況をせせら笑っているに違いない。 私が真っ暗な落とし穴に落ちてしまって、不安で、だけど嬉しくて、だけど不安の方が少し多いような 複雑な心境と状況の中で、彼へメールを送っている頃、 その卑怯な男は、部屋のエアコンを28度にして、扇風機を弱にすると、 エアコン23度の時よりも電気代が少し浮くんじゃないかということばかり考えているんだ! 落とし穴へ手を差し伸べるのは、「笑っていいとも」が終わってからにしようとか!そういうことを! 私は返信されるメールを待ち続ける。 私という「存在」と「笑っていいとも」が同じ天秤にかけられているということを知らずに。 私は落とし穴から差し込む眩しい光を見上げ続ける。 いつか彼が、救出の紐を降ろしてくれることを信じて その紐が私の「存在」を支えきれずに途中で切れてしまうことを知らずに。 途中で切れた紐を見てもなお騙されていると信じようとしない自分を信じて。 地上では、卑怯な男と、タモリがせせら笑っているということを知らずに。 卑怯な男の、狐の尻尾は永遠に見ることができない。 卑怯な男の、化けの皮は永遠に剥がれない。 卑怯な狼は、羊の皮をかぶり、今夜も私を喰い殺す。 |
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