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| 2002年08月20日(火) 卑怯な女、狼を被り、今夜も僕を舐め回す。 |
| 彼女は卑怯な女だ。 往々にして卑怯な女は要領が良い。彼女も例外ではない。 時に卑怯な女は、草原の片隅に突如として現れるアゲハ蝶のように大胆で スズメ蜂が巣ごとかかっても敵わないような強力な毒を持つ。 流行に敏感なその唇の色は季節と共に変化し、 肌はエステで輝き、爪はサロンで磨かれ、思考回路は江國香織に占領され、 麦藁帽子と清楚なワンピースの下には黒いブラジャーをまとっている。 彼女は自分の物差し以外では物事を考えようとしない。 いつも自分の目線で物事を考え、目線の範囲から脱落するものは、無関係を意味する。 卑怯な女は、酒を好む。無意味な激情を曝け出す。突然の慟哭で脅かす。 10分ごとに受信されるメールも、 メールの内容の幼稚な表現も、 端を切ったように、連続して書かれている無理な要請も、 卑怯な女のなせる業。憐れな男が落ちる術。 落とされるとわかりきっていた落とし穴に口笛吹きながら踏みいれる男は 穴に落下した瞬間に大きな勘違いをする。 この女は、オレのものになった。 きっと彼女は、そんな状況を甲高く笑っているに違いない。 僕が真っ暗な落とし穴に落ちてしまって、不安どころか満足感に浸りながら 楽観的な心境と状況の中で、彼女にメールを送っている頃、 その卑怯な女は、今夜焼肉を食べて明日の朝と昼ご飯を抜くことと、 今夜は冷し中華にして明日の朝はトースト食べてお昼にパスタ食べるのと どっちがダイエットに効果的なのかしらということばかり考えているんだ! 落とし穴へ手を差し伸べるのは、塩カルビを食べ終わってからにしようとか!そういうことを! 僕は返信されるメールを待ち続ける。 僕という「存在」と「塩カルビ」が同じ天秤にかけられているということを知らずに。 僕は落とし穴から差し込む淡い月の光を見上げ続ける。 いつか彼女が、救出のはしごを降ろしてくれることを信じて そのはしごが僕の「存在」を支えきれずに途中で折れてしまうことを知らずに。 途中で折れたはしごを見てもなお落とし穴の下から「愛してる!」と叫ぶ自分を信じて。 地上では、卑怯な女と、塩カルビが食べ頃になっているということを知らずに。 卑怯な女の、猫の呪いは永遠に解くことができない。 卑怯な女の、化けの皮は永遠に剥がれない。 卑怯な猫は、狼の皮をかぶり、今夜も僕を舐め回す。 |
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