2002年08月13日(火)  入道雲。
僕が住んでいるアパートは、ピラミッド最深部にある王様の部屋のように風通しが悪く
愛媛の段々畑のように日当たりが良いので、朝の訪れは地獄の訪れと同等のもので
 
カプセルホテル顔負けのサウナと化した6畳1間は、
扇風機からクジラの溜息のような生温かい風が送られ、
窓からは小3の頃の担任だった近藤先生の説教のようなミンミンゼミの声が聞こえ、
8月の日差しを思いきり吸いこんだ淡いグリーンの布団は
オープニングでQ太郎を包む雲のように、必要以上にフカフカしすぎていて、
 
かといってソファーは赤点のテストを発見した母の頬骨のように固く、
携帯電話は、どこ行った?
 
いつだって朝になると僕の携帯電話は姿を消す。理由なんて知らない。
 
ふいに右頭頂部を刺激する鈍痛。これは、脳血管の収縮、筋肉の緊張、昨夜の償い、
この鈍痛は、紛れもない二日酔い。
携帯電話は、どこ行った?
 
いつだって朝になると僕の携帯電話は姿を消す。隣に寝てる子なんて知らない。
誰だ、この子は?嘘。僕はこの子を知っている。
手を繋いでアパートの階段を昇ったところまで覚えている。
僕は死ぬ前のフラミンゴのように酔っ払っていて、ドアの鍵の差し込み口になかなか鍵が刺せず
この子がドアを開けてくれたんだ。後は覚えていない。
 
覚えているのは、歴史は夜に作られるってこと。
 
8月13日の午前7時30分。阿呆みたいに暑くて、馬鹿みたいに悲しい。
携帯電話は、どこ行った?
隣に寝ているこの子は誰だ?嘘。僕はこの子を知っている。歴史を作った夜が明けた。
 
ベランダの窓を明けてタバコに火をつける。
肺まで深く吸いこんだマイルドセブンの煙は、その日の午後、入道雲になりました。

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