2002年08月12日(月)  不安と煙とプールの水と。
キミはいつだって、食事を終えフォークを下ろした途端、トイレから戻ってきた途端、
タバコを揉み消した途端、鏡を見て眉を書き終えた途端、手を繋いで、それから不意に手を離した途端、
そう、いつだって、それはキミの思考回路に仕組まれたプログラムと思われるほど、
いつだって、確実に、同じトーンで、一字一句狂わず、同じ表情で、僕に問い掛ける。
 
「ねぇ、私のどこがいいの?私のどこが好きなの?」
 
知らんがな。何言うとんねん。
そして僕はいつも心の中でなぜか関西弁でそう応える。
 
ここで「キミの全てが好きなんだ」なんて言ったらまず駄目だ。
女性はそんな答えなんて今シーズンのタイガースが優勝できると思うくらい期待していない。
かといって巨人がこのまま独走するだなんて当たり前の答えなんてのも勿論期待していない。
多分、こう尋ねた時の女性って答えなんてこれっぽっちも期待していないのかもしれない。
 
「キミが小さな可愛い子供見た時ってさ、左目の水晶体がやけに綺麗に輝くでしょ。僕はそこが好きなんだ」
 
なんて言って煙に巻いちゃえばいいんだ。彼女の頭に?マークでもつけてやればいいんだ。
理由がないと安心できないなんて、馬鹿げてるよ。
僕はキミが好きになったから、好きなんだ。それ以上でもそれ以下でもない。
 
キミは不安な要素がないと、自ら不安の要因を作り出して、その中に身を投げるんだ。
不安の中に安心を見出そうとしているんだ。
「ねぇ、本当にどこが好きなの?私何もできないし、私より綺麗な人いっぱいいるじゃん」
 
何もできない。私より綺麗な人がいっぱいいる。
まぁ、こういうことだよ。そういうことが自ら生み出した不安の種なんだ。
彼氏がいない時なんてそういうこと全然考えないでしょ。
むしろ「私のほうがあのコより可愛いと思うし何でもできるわ」なんて思ってるでしょ。
でも彼氏ができた途端、弱気になっちゃって。読売ジャイアンツ首位転落だよまったく。
 
だから僕は煙に巻き続けるんだ。
 
「キミは嘘ついた時、鎖骨が少し陥没するんだよ。そんな素直なところが好きなんだ」
 
キミを守る為に。
 
だから僕はなんでもないような顔をするんだ。
 
「キミは2時間目のプールの時間が終わって4時間目の社会の時間くらいに
ふいに僕の耳から出てきた温かいプールの水のような存在なんだ」
 
キミとずっと一緒にいる為に。

-->
翌日 / 目次 / 先日