2002年08月08日(木)  あらよ出前一丁。
職場の近くの定食屋はとてもいい加減で、みんな嫌っているけど
僕は時々、昼休みにそこに出前を注文する。
 
「唐揚げ定食できますか?」
「あー。無理だねぇ。鶏肉が、切れてんだ」
「じゃあトンカツ定食できますか?」
「あー。できるだけ頑張ってみるよ」
 
できるだけ頑張ってみる。定食屋が客の注文に対してできるだけ頑張ってみるとは。
そもそも定食屋で鶏肉が切れている時点ですでにおかしい。
けれども僕は料理に対して微塵の努力も情熱も感じられないそこの定食屋のいい加減さが好きだ。
 
「12時15分にお願いします」
「はいはいわかってるよ」
 
定食屋のおじちゃんはいつもそう言うけど、時間通りに出前が来た事なんて一度だってない。
だいたい15分から20分は確実に遅れる。時々味噌汁だって忘れてしまうことだってある。
そういうときも「あー。味噌汁忘れちまった」と言ってそれでおしまいである。
謝るとか、料金をサービスするとか、そういう心遣いがこれっぽっちもないのだ。
 
「はいよー。お待たせー」
おじちゃんはいつも自転車でやってくる。今日のように出前が僕1人の場合は
自転車のカゴに料理を乗せてやってくる。ガタガタさせてやってくる。
トンカツに添えてあるキャベツもケチャップスパゲティも唐揚げもぐしゃぐしゃになってしまう。
 
ここでおかしいと気付かなければいけないことは
トンカツ定食に唐揚げが一個添えられているということである。
「あー。無理だねぇ。鶏肉が、切れてんだ」
確実に注文する時の会話と矛盾している。僕はいつもその矛盾を指摘したい気持ちでいっぱいなんだけど
なんだかすごい形相と理屈でこねられて、あっという間に丸め込まれそうなので我慢している。
 
まぁ、そういう一癖も二癖もある料理人の作る料理というのは
決して凡人には作り出すことのできない妙味とか
先祖代々受け継がれてきたどこにも真似できない秘伝のタレとか使ってそうだけど
この定食屋に限っては、そういうことは、まずない。
 
トンカツでも唐揚げでも適当にさばいて油でジューはいできあがり。って感じだ。
 
けれども僕はこの定食屋を愛している。
このおじさんみたいにいい加減に歳を取ってみたいといつも心の底のこれまた底あたりで祈っている。

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