2002年07月21日(日)  バナナフィッシュにうってつけの夜。
昨夜は後輩に嫌々誘われて、酒を飲みに行った。
後輩は日本のお姉さんや、東南アジアのお姉さんが隣に座ってくれる店が大好きで
僕も別に嫌いなわけじゃないけど、60分3000円とか90分4500円とか時間を気にしながら
酒を飲むことが嫌いなので、あまり自分からはそういう店には行かない。
 
今日の相手は今時珍しい漆黒の髪の女の子。
目立たないピアスをして、指輪もブレスレットもはめていない。
化粧もすごくナチュラルで、嫌味ったらしくない。
 
それでも僕は明日仕事だから0時には帰りたいなぁ。と考えていた。
適当な相槌を打って、90分座り続けて4500円払ってサヨナラしたかった。
しかし、彼女の一言で、僕の気持ちは一変した。
 
彼女は昼間、国語と英語の家庭教師をしていると言った。
「へぇ、国語の先生ねぇ。それじゃ、本とか読むの?」と僕が言うと彼女の表情も一変した。
「うん、読む読む!私読書大好きなの」
「あ、そうなんだ。今何呼んでるの?」
「えっとね、サリンジャー」
 
J.D.サリンジャー!!僕は心の中で叫んだ。僕も今サリンジャーを読んでいるのだった。
「ライムギ畑でつかまえて」で一躍有名になった作家。僕はこの作家の子供の描写が大好きなのだ。
 
「僕ね、『バナナフィッシュにうってつけの日』がすごく好きなんだ」
「私もーー!」
なぜか握手をする2人。もう周囲は見えない2人だけの世界に突入。
まさか飲み屋で『バナナフィッシュにうってつけの日』の話をする相手がいるなんて。
これは道頓堀で巨人ファンに喧嘩を売られる確率より低いんじゃないかなあ。
 
そして場に似つかない話を延々と話し続ける2人。
『スプートニクの恋人』は先週読んだばかり(偶然に僕も先週読み返したばかり!)
太宰治の『斜陽』が好き。吉本ばななってどうなのかな。アゴタ・クリストフも面白いよ。『フラニーとゾーイ』今度貸してよ。
 
往々にして辛いことの多い人生の中での貴重な至福の時間というものは
こういう時を言うんじゃないかなぁと考えながら、絶えることのない読書の話。
 
「私ね、将来臨床心理士になりたくて勉強してるの」
「あ、僕は精神保健福祉士になりたくて勉強してる最中なんだ」
 
なんと共通点の多いこと!
往々にして辛いことの多い人生の中で、
神様。どうかこの出逢いが運命と呼べるものに位置付けられますように。

-->
翌日 / 目次 / 先日