2002年07月04日(木)  小さな嘘、大きなバスト。
小さな嘘をついた。
それはシャワーを浴びて一晩寝たら忘れてしまいそうな小さな嘘だったし、
実際僕はたった一晩で――3週間も干していない布団で眠ったとしても――その嘘のことを忘れていた。
 
それはほんの小さな嘘だった。
小さな嘘は、ある時はその場面を乗りきるために使うし、ある時は物事を装飾するために使う。
だけど今回はそんな自分の為ではなく、君の為に嘘をついた。
自意識が先行せずに、敬愛と慈愛と高愛の精神をもって、嘘をついた。
 
それはそれは小さな嘘で、往々の小さな嘘がそうであるように、
この嘘も、太陽が沈み、夜の闇が浸食する頃には消えてしまうはずだった。
しかし、その火種は、生き続けた。
僕の記憶と引き離された場所で――2週間も干していない布団とは別の場所で――
消えない火種は忘却の水面化でマグマと化して、噴煙を上げる日を待っていた。
 
僕の元を離れた小さな嘘は、風に乗って、やがて君の耳に届くことになった。
ファミレスで君はコーヒーカップを心持ち強く置いて、
コップのコーヒーの波のようにひどく不機嫌な口調で言った。
 
「82センチよ」
「ん?」
僕は泥のような色と初めての家庭科実習で作った味噌汁のような味のコーヒーを飲みながら
82センチの意味を考えた。
「90センチなわけないじゃない。バカ」
 
彼女の豊満な(豊満に見えなくもない)バストを友人に誇張して言った小さな嘘が
バレた。

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