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| 2002年06月26日(水) チャンダン香。 |
| チャンダン香に火をつけたとき、突然昔の彼女が部屋のドアを開けた。 チャンダン香とは昔の彼女も、そのまた昔の彼女も好きだった要するに誰でも好きなお香の名前。 近所の雑貨屋で300円くらいで買える代物で、とても優しい香りがする。 僕の部屋にはこのチャンダン香の香りが染み付いている。 「キミが来る予感がしてたんだ」と僕が言う前に 「私が来るって予想してたでしょ」と彼女が言った。 最後に会ったのは一緒に焼肉を食べに行った時だから・・・約2週間振りだろうか。 優しくて薄い煙に包まれる部屋の中で久々にゆっくりと話をした。 チャンダン香の優しい香りは、別れた男女の繋がりをあっさりと否定するように僕たちを向き合わせる。 そしてそのお香の香りが消えかかる頃には、彼女はうたた寝をし、僕は腕枕をしている。 僕のせいでも彼女のせいでもない。チャンダン香の香りのせいだ。 そう考えた方が納得するでしょう? 彼女がうたた寝をしている時、僕は腕枕をしながら足元にあったETのぬいぐるみを両足で挟んで引き寄せる。 彼女はこのETのぬいぐるみが大好きで、僕たちの関係が駄目になってしまった最後の1週間は 僕よりもこのETのぬいぐるみと話している時間が多かったくらいだ。 僕の肩と彼女の顔の間にそっとETのぬいぐるみを横たわらせる。 そして右手は使えないまま左手で不器用に煙草を取って不器用に火をつけて天井を見ながら不器用に煙を吐いた。 煙草を吸い終えた頃、彼女が驚いた声を挙げて目を覚ました。 目の前に突然現れたETのぬいぐるみを見ながら 「やっぱり、あなたが好き」 と言った。 ETのぬいぐるみに言っているのかETのぬいぐるみの向こう側に横たわる僕に言っているのかわからなかったけど 僕の右腕は久し振りに腕枕なんかしたから痺れきってしまっていて 多分、それも――好きとかETとか手の痺れとか―― チャンダン香の仕業だと思って自分を納得させた。 |
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