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| 2002年06月21日(金) 2つの約束。 |
| 「じゃあ私が決めてあげる」 3件目のバーで彼女はそう言った。 マスターに「何かあっさりした美味しいお酒作って下さい」と言って、 数分後に「何かあっさりした美味しいお酒」が運ばれてきて 彼女は一口飲んで「あっ、美味しい」と僕を見て言って、それからマスターに向かって「美味しい」と言った。 僕は氷が全部溶けても少々強すぎるカティーサークを飲みながら彼女に微笑み返した。 「じゃあ私が決めてあげる」 「僕としてはそっちの方が楽なんだ」 僕はカティーサークの入ったグラスを弄びながら壁にもたれてそう言った。 「あなたが守らないといけないことは2つ」 「うん」僕はマイルドセブンに火をつけた。 「1つは睡眠時間は最高6時間」 「最高?」 「そうよ。最高6時間。だって勿体無いじゃない。眠るっていうのはね、死んじゃってるのと同じことなの。 みんな20歳越えたら歳とるの早いって言うでしょ。それは間違ってるの。 眠っちゃってて頭働かせないから死んじゃってるのよ。 だからあなたは休日に午後まで寝てるなんて馬鹿なことしないで。勿体無いわよ。わかった?」 「わかった。守れそうな気がする」 僕はカティーサークに見切りをつけてコーヒーを注文した。 アルコールの入った頭じゃ彼女の言葉を聞き逃してしまいそうな気がした。 「そしてあと1つ。『女性』に興味を持つこと」 「ふむ」 「髪を切ったとか、パーマかけたとか、バッグ買ったとか、財布変えたとか、 前のデートでどんな洋服着てて、今日のデートはどんな服着てるとか、 そういうことに反応するの。あなたの話を聞いてると、無関心すぎるわよ。わかった?」 「わかった。守れそうな気がする」 彼女は「よろしい」と頷いて「何かあっさりした美味しいお酒」を一口飲んで マスターに向かって「このお酒何ていう名前なんですか?」と言った。 名前は決まっていないオリジナルの酒らしく、マスターは口篭もりながら愛想笑いを浮かべていた。 「Tシャツ」 「へ?」僕とマスターは一様に目を開いた。 「Tシャツ」 「え?何が?」 「だからTシャツよ。このカクテルの名前はTシャツ。 あっさりしてて涼しげでTシャツって感じするでしょ。マスターのTシャツも似合ってるし」 「じゃあTシャツで決定しよう」 僕はマスターに向かってそう言った。マスターも困ったように笑いながら頷いた。 |
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