2002年04月20日(土)  パッチンエビ。
今夜のご飯と言って、彼女はビニール袋に生きたエビを4匹入れて我が家にやって来た。
見たこともないようなエビだった。そもそもそれがエビかどうかさえ疑わしかった。
エビといえばエビに見えるし、カニといえばカニに見えた。
 
「・・・ねぇ、これ何ていうエビ?」
僕は恐る恐るビニール袋の中を覗きこんでそう言った。
「パッチンエビ!」
彼女は無邪気な笑顔でそう言ったけど、そのエビの名称自体が疑わしかった。
ビニール袋の中でうごめく生物はどうみたってカブトガニだった。
 
「・・・ねぇ、これって絶滅寸前の天然記念物とかじゃないの?」
「違うわよ。それってトキでしょ!」
まあ、トキも絶滅寸前の天然記念物だけど。
 
「ほら、カワイイでしょ!」
彼女はビニール袋から天然記念物の尾を掴んで無邪気に僕に見せる。
僕が顔を寄せた瞬間、突然その天然記念物は身を翻して飛び跳ねた。
と同時に僕は身を仰け反らせてその勢いで部屋の柱で頭部を強打した。
 
「ハハッ。弱虫!」
彼女は天然記念物と一緒に頭を強打した僕を見下ろしてそう言った。
「・・・ねぇ、ホントにそれ料理するの?」
「当然でしょ。美味しいんだから!」
「・・・ねぇ、それ何ていうエビ?」
「パッチンエビ!」
何度聞いてもパッチンエビだった。
 
ギギギと最期の泣き声を聞いたのが最期で、
数十分後、パッチンエビは食卓に味噌汁に浸かって真っ二つになって僕の前に姿を現した。
  
彼女の言葉だけではいまいち真意が掴みづらかったので、
味噌汁の中の謎の生物にも問い掛けてみた。
 
「キミは、絶滅寸前の生き物ですか?」
「パッチンエビ!」
 
彼女が横から口を挟んだ。

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