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| 2002年04月12日(金) 名案、高笑い、つつく。 |
| 「電話があるでしょ!それ使うのよ!」 彼女は両手と瞳孔を大きく広げて、電話器を指差した。 僕も何のことやら全くわからずに電話器を見た。 電話器は隣の部屋に置いてある。 インターネットをするために電話線を繋げているようなもので、 僕の部屋の電話器は全く使われていない。 70年代のアメリカンテイスト溢れるアンティークな電話器はすでにインテリアと化している。 「この隣の部屋の電話器を目覚ましに使うのよ!」 彼女は、2時間残業してきたと言っているのに、とても元気だ。 「あなたはね、部屋の中に全ての目覚まし時計を置いているからいけないのよ。 4個もの役立たずの目覚ましを全部消してまわる大馬鹿者。 そんな大馬鹿者のために私は考えたの。隣の部屋の役立たずの骨董品を使おうってね」 彼女の名案は、毎朝部屋に電話をして、僕をわざわざ隣の部屋まで歩かせて 春眠暁を覚えさせようとしているのだ。 ――― 最大の名案が発案された翌朝。 さっそく7時20分に隣の部屋の電話が発情期の鶏のように鳴きだした。 僕はもちろん布団の中。すでに部屋に置いてある7時にセットされた4つの目覚ましは命を失っている。 僕が丁寧に消してまわったのだ。 彼女の愛情も、朝7時20分にはきつい。 僕は電話の音が聞こえないふりをすることにした。 5分も電話を取らなければ彼女だって諦めるだろう。 枕に顔を埋ずめる。電話は鳴りつづける。 頭まで布団をかぶる。電話は鳴り続ける。 枕元にあったTシャツを顔にかぶせる。電話は鳴り続ける。 リリリリリン!リリリリリン!リリリリリン! ヒステリックに隣の部屋の骨董品は鳴り続ける。 片目だけ開けて時計を見る。7時30分。 もう彼女は10分も呼び出し音を聞き続けているのだ。 聞き続けているから電話も鳴り続ける。当然というか、必然というか、僕にとっては不条理だ。 ・・・・・(さらに10分経過) 片目だけ開けて時計を見る。7時40分。 負けた。僕は重い体を起こして隣の部屋まで歩く。 忘れていた機能に目覚めた骨董品に手を伸ばそうとしたその時、 長い地震がやんだように、突然電話が止まる。 ・・・。勝ったのか?負けたのか?・・・勝ったかも。 いや、この絶妙のタイミング。 やっぱり僕は敗北者だ。 早朝の 人生の 恋愛の 敗北者だ。 |
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