2002年04月10日(水)  燕。
このアパートに越してもう3年経つ。
今年も僕のアパートのベランダにツバメが帰ってきた。
 
ツバメが巣作りをする家には幸せが訪れるというけど、
少なくとも僕の部屋にはここ3年間、幸福の鈴は鳴り響いていない。
だけど、幸せじゃないけど、不幸でもない。
たぶん、こういうことが、幸せなんだ。
ボディーシャンプーが切れてから、石鹸の尊さを知るんだ。
 
今年もツバメは朝早い時間から巣作りに精を出している。
休憩するときは、電線に夫婦2羽揃って佇んで僕の部屋を眺めている。
僕の部屋はカーテンがないから
ツバメが止まっている電線からも僕の部屋が、僕が、それを取り巻くものが良く見えるんだろうな。
 
毎年ツバメがやってくる度に僕の髪型が変わっていることも
部屋の小説とフィギアが増えていることも
ソファーの色が変わっていることも
彼女が変わっていることも
みんな知ってるんだろうな。
 
ベランダにツバメの巣が完成すると、洗濯物を干す範囲が狭くなる。
 
一昨年はお気に入りのポロシャツの背中の部分にツバメの糞をつけたまま外出して
彼女に「何か黒いのついてるよ」と言われた。
僕たちはまだ付き合い始めて間もなかったから、
それをおもむろにツバメの糞とどちらとも言えなかった。
 
去年は夜に寝返りをうったら、昼間干したばかりの布団にツバメの糞がついていた。
 
それでも僕はいつか訪れるはずの幸せを信じて
その羽根が未来への翼の欠片だと信じて
その春風が新しい季節と可能性の始まりだと信じて
その糞が、幸せへの福音だと信じて
 
今年も僕はベランダに糞を落し続けるツバメを両手を掲げて歓迎した。

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