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| 2002年04月09日(火) 見えないもの。見えてくるもの。 |
| 僕は3度の飯より子供が好きで、なんて書くと変な風に誤解されてしまいそうだが、 少なくとも、子供のためならご飯1食くらい抜いたって構わないという程度に子供が好きなのである。 僕が働いている病院の外来は、お母さんが子供を連れて来院するケースも少なくない。 入り口の自動ドアが開いて、お母さんと手を繋いだ子供が現れると僕の目は瞬時にして輝きだす。 そして仕事が全く手につかなくなる。 お母さんの診察中に、子供と遊ぶ。 僕は職員の健康診断の一覧表を作ったり 患者の内服薬の確認をしたり 飲み薬を調剤したり 点滴をセットしたり 処方せんを確認したり 5月の病院行事の予定を立てたりしなければいけないのだけど そんなもの全部放っぽりだして子供の笑顔に合わせて笑う。 僕は小さい頃、病院のあの冷たい雰囲気と、暗い廊下と、消毒液の匂いと、 あらゆる不幸が滲み出ているような壁の染みが嫌いだった。 病院の入り口を一歩くぐると、足が震えて、表情が強張った。 看護婦さんの笑顔でさえ怖かった。笑顔の裏には注射が潜んでいた。 大人になって、看護士になって、嫌いだった病院で働くようになって、 病院が嫌いな子供達に会うようになって 子供達の前では薬も注射も傷の手当ても潜んでいない純粋な笑顔を作ろうと思うようになった。 僕の白衣のポケットには、いつもキャラクターのシールと、 ペットボトルについているようなオマケが入っている。 白衣と恐怖を結び付けないために、白衣=面白いお兄ちゃんと結びつけるために、 僕はあらゆる仕事を放っぽり出して子供と一緒に笑う。 時には手を繋いで病院のグランドを散歩する。 「桜、散っちゃったね。お花見行った?」 「・・・ううん。お母さんがね、病気だからどこにも行かなかったの」 「そうなんだ」 「ここもサクラいっぱい咲くの?」 「うん。毎年この広場いっぱいに咲くんだよ」 「じゃあ、ここでもお花見ができるんだね」 「そうだね、もうちょっと早ければここもキレイだったんだけどね」 「じゃあ、来年ここでお母さんとお兄ちゃんとお花見する!」 「ハハハッ。そうだね」 「お母さん早く元気にならないかなぁ」 右手には僕がくれたコンビニで買ったソフトドリンクのオマケを握りしめている。 花が散って新緑が見え始めた桜を見上げながら 傍らの女の子のお母さんが早く元気になるようにと2人で祈った。 |
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