2002年04月03日(水)  左から3番目の春。
窓から見える左から3本目の桜が一向に蕾を開く気配がしない。
その桜の周りだけ時間が止まっているように、寂しく佇んでいる。
人々はその桜の前を通る度に、寂しげな桜の木を指差し、嘲笑っている。
 
窓からは桜の木が8本見える。
どの桜もこの季節を待ち構えていたかのように、大きく枝を広げ
力の限り花弁を開げている。
 
左から3本目の桜は蕾を開かない。
 
僕は朝目覚めるたびに、その桜を見る。
周囲の桜より一回り小さい左から3本目の桜は、
謙遜しているのか、躊躇しているのか、遠慮しているのか、それとも、枯れているのか。
 
左から3本目の桜が僕に話し掛ける。
 
――僕は日本の、花です。
 
左から3本目の桜が僕に話し掛ける。
 
――僕は日本の、花です。
 
僕は、言葉の本当の意味がよくわからずに、その桜を毎日見守っていた。
日本の花だったら、日本の木だったら、なぜ蕾を開かない?
なぜ周囲に同調しない?周囲に同調しない?
 
――僕は日本の、花です。
 
翌日、左から3本目の日本の花は、蕾を膨らませ、花を開き、花弁を散らすことなく、
外国人のような太い腕を持った人たちに、
切り落とされてしまいました。
 
左から3本目の日本の花は、静かに――その細い幹を切られている最中も――静かに
自らの春の訪れを待ちながら、
 
羽毛が僕の肌に触れるようにそっと――地面に横たわりました。

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