2002年03月03日(日)  ないものねだり。
今日は久し振りに天気が良くて、しかも日曜日で診察は休みなので、
外来受け付けに座り、両肘をつきながら事務のお姉さんと話をしていた。
 
「暇だねぇ」
「そうですねぇ」
「こんなに暇だと忙しいほうがいいわねぇ」
「ないものねだりですねぇ」
「彼氏と一緒だね」
 
ないものねだりについて。
結局、人は、あらゆる事象に対してないものねだりをするんです。
穏やかな彼氏には怒鳴ってほしい、怒鳴る彼氏には黙ってほしい。
おしゃべりな彼女にはおしとやかにしてほしいし、暗い彼女には笑ってほしい。
 
「え?彼氏に何をないものねだりしてるんですか?」
「う〜ん。これちょっと自分でもおかしいと思うんだけど」
「思うんだけど?」
「う〜ん・・・まぁいいや。聞かなかったことにして」
「ハハッ。そういうことはね、話したくて仕様がない人が言うセリフなんですよ」
 
2人、両肘をついたまま自動ドアの向こう側を眺める。
正門の梅はもう散ってしまった。
僕は事務のお姉さんが話を切り出すのを黙って待つ。
こういうときは無理に詮索してはいけない。
 
「えっとね」
ほら。
「私の彼氏、あんまり真面目過ぎるのよ。悪いことなんて1つもできないの」
「いいことじゃないですか」
「う〜ん。そうなんだけど・・・。たまにはね、浮気とかしてね、困らせてほしいなぁって」
「典型的なないものねだりですね」
 
僕達は、再び自分の中の沈黙に入り、それぞれに思いを馳せる。
 
「・・・この前、あなたと食事に行ったでしょ」
「うん。行きましたね。美味しかったね、あの店」
「あのとき、2人ともいっぱいお酒飲んだでしょ」
「飲みましたね。ワイン2本開けちゃったもん」
「あの時、憶えてる?帰る時にあなた、キ」
「してません。僕は絶対にしてません」
「したじゃない。私はただちょっと目を閉じただけでしょ」
「わ。汚ねぇ。自分を正当化しちゃあ、ダメです」
「あれって浮気でしょ?」
「・・・」
「ねぇ。あ。ねぇって!どこ行くのよ!」
 
ないものをねだらない人は、ないものをどこかで自ら補充する。

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