2002年01月20日(日)  呪い。
キスをしていたら突然強く噛まれて、下唇を数ミリ切ってしまった。
 
「呪いをかけたの」
 
彼女は勝ち誇ったような顔で言う。
日曜日の午後の小さなソファーの上。
お金のない僕たちはキス以外に何もすることがなかった。
 
出血した下唇が小さく腫れあがる。
 
「口紅してるみたい」
 
彼女は無邪気に笑う。
僕は下唇と、強く吸い付けられた首筋を気にしながら交互に鏡を見る。
 
日曜日の午後はそのまま日曜日の夜になった。
 
彼女の顔が近くにあった。
 
僕は彼女のまつ毛にそっと触れる。
僕が触れると同時に彼女のまつ毛は数回、瞬きをする。
 
僕は女性のまつ毛に触れることが好きで、いつもこうやって退屈なときは、
まつ毛を触って、その反応を楽しむ。
 
まつ毛に触れると、必ず、瞬きをする。
この単純な反応が好きだ。この行動には誰も抗することができない。
誰もが、必ず、瞬きをする。
 
彼女の、今まで絶対的な「瞬き」が、僕の指によって、相対的になり、形而的になる。
僕が彼女の「瞬き」を支配する。絶対的な概念を僕の指で覆す。
 
「もう、なにやってんのよ」
 
彼女が顔を背けて言う。
 
「呪いをかけたの」
 
僕は勝ち誇ったような顔で言う。
日曜日の夜の小さなソファーの上。

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