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| 2002年01月16日(水) 雨、煙、真っ赤なシート。 |
| それは突然の出来事だった。 突然雨が降り出した。ワイパーを全開にしないと視界が保たれなかった。 雨の日は車の中でブラックミュージックを流す。 車内でしんなりと今から始まる仕事に向けて心の準備をする。 雨は降り続けていた。そして職場まであの10メートルだった。 職場に右折しようとする車が先頭にいて、4・5台の車の列ができていた。 車内ではアリーヤの「Rock The Boat」が流れていた。 右手のタバコが、薄い霧を作っていた。 視界を失った。世界が揺れた。 スローモーションで動く車内の中で、アリーヤのCDジャケットが宙を舞うのが見えた。 一瞬の出来事だった。 後ろを振り返った。僕の車から白い煙が上がっているのが見えた。 タバコの煙じゃなかった。 白い煙の向こう側から見える白い車のフロントガラスのを隔てて女性の顔が見えた。 職場まで10メートル。車に追突された午前8時20分。 「ケガはありませんか」 女性が僕に駆け寄る。ケガよりも遅刻が決定されたことが痛かった。 警察を呼んで事務的な(非情緒的な)やりとりをする。 平謝りする女性。気の小さそうな保険屋。面倒臭そうな警察。 「いいんです」雨は降り続ける。僕たちは濡れ続ける。 「ちょっと待ってて下さい」僕は走り出す。10メートル先の職場へ走る。 「すいません、ちょっとそこで車ぶつけられたから、午前中休み下さい」と看護婦さんに言う。 「はいはい」看護婦さんはなんでもなさそうに言う。ちっとも信じちゃいない。 「じゃ、お願いしますね、あぁ首が痛いよぅ」 と真実味を増すために言ってはみたものの、忙しそうな看護婦さんはまた 「はいはい」と言ってどこかへ言ってしまった。 「台車を手配しましたから、少々お待ち下さい」気の小さそうな保険屋が言う。 雨の中、30分程待つ。もう警察は帰っていた。警察の仕事は終わったのだ。 「あとは保険屋さんとお願いしますね」と何回も言っていた。 雨が降っていて、雨宿りするところもなかったので、多分、面倒臭かったのだろう。 30分後、赤面してしまいそうな可愛らしいクマがプリントされた真っ赤なシートの軽自動車が届く。 「これで我慢して下さいね」保険屋が申し訳なさそうに言う。 これで我慢できたらこれからの人生で起こる様々な辛い出来事も乗り越えていけそうな気がした。 |
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