2001年11月04日(日)  カフェと酒と冬の始まり。
仕事が終わる数十分前に、小さな波1つない静かな湖面を維持していたダムが突然、決壊した。
病棟内を東奔西走し、薬を準備し、患者の左手に点滴の針を打ちながら後輩に指示を出す。
声の抑揚を制限し、決して慌てる素振りを見せず現状を的確に判断し、額に流れる汗を拭く。
 
患者が安定し、ホッと一息つき時計を見る。通常の勤務時間を20分過ぎている。
 
今日は大切な用事があるのだ。
 
先程まで冷静な判断をしていた自分の姿はなく、
待ち合わせの時間という明確な目的が達せられそうもなく、混乱し、狼狽し、
後輩に「あとはよろしく!帰る!」とだけ言い残し、更衣室へと走った。
 
7時の待ち合わせ。24分遅刻。仕事が忙しくて、と言い訳を言いたかったが、
それは男らしくないのでその言葉を飲み込もうと思ったが、
 
「ごめんなさい。仕事が忙しくて」
 
と、私の口から自然に発せられた。理屈では片付けられない真実。
やはり男はこうでなければいけない。
僕が前から行きたかったカフェに行く。グリーンで統一されたシンプルなカフェ。
グリーンライクな人間にとってはたまらない空間。
ジーマで乾杯。仕事が忙しかった分だけ酒も美味しい。
 
2件目は1件目と趣向がガラリと変わったカフェに行く。
僕はこういうカフェのインテリアにいつも関心が向く。壁を触り、天井を見上げ、
スピーカーの場所を探し、敷物をさすり、テーブルをなぞる。
常にキョロキョロしているので、相手に申し訳なくさえ感じる。
 
明日が休みだったら、もう少し酒を飲みたいのに。
と頭の中で何度か反芻してからカフェを後にする。
 
今日は、なんだかゆっくり話ができたと思っていたら、
2人で話をするのは今回が初めてだった。
 
それにしても11月の夜はこんなにも寒かっただろうか。
冬は目の前ではなく、もうまつ毛の辺りに近づいていた。

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