2001年10月25日(木)  今日のおやつは木漏れ日の中。
もはや午後に起床することなんて珍しいことではない。
僕は「午後に起床して自己嫌悪する自分」という自我を見事に受容した。

午後1時。「パンチ・ザ・モンキー」のBGMで目が覚める。
窓を開ける。ベランダから見える通りの人たちは皆、午後の疲れた表情をしている。
僕はまだ瞼を半分も開けていない。こんな生活は社会にフェアじゃない。

今日は午後から昔の彼女と会う約束だったが、約束の時間はもう過ぎてしまっている。
昔の彼女と会うという事実に耐え兼ねて僕は午前の起床を無意識に避けてしまったのだろう。

部屋の掃除をする。
数ヶ月袖を通すことのなかった ――そしてこれからもないであろう
いくつかの衣類を思い切って処分する。
その衣類に染み付いた様々な思い出は、襟口の黄ばみとなって色あせていた。

夏物の衣類をバックに詰め込んでクリーニングに持って行く。
ついでにカーペットも持って行く。
僕はカーペットもクリーニングに出せるという事実を一昨日知ったばかりだ。

「そんなことも知らなかったの?バカ」
と友人に思わず罵倒された。
君だってジャイアントカプリコのCMに出てる女の子が松田聖子の娘だってことさえ知らなかったじゃないか。
その人の常識は相手の常識ってわけじゃないんだ。

「あ、いつもありがとうございます。ヨシムラさんですね」
クリーニングの店員が思い切り僕の名前を間違える。
顔は覚えていて名は間違える。僕はこのクリーニング屋の微妙な立場の常連なのだ。

部屋に戻り、時計を見る。午後4時。そういえば僕はまだ起きてから何も食べていない。
僕の空腹感は、食欲について考えて、はじめて喚起される。
食欲について考える事がなかったら僕は3日3晩何も食べないだろう。

今からまた外に出るのも面倒臭いので、
友人が僕の部屋に買い溜めしているナビスコ オレオのクリームサンドクッキーを食べた。
コーヒーでも飲もうと思ったが、冷蔵庫にはビールしかなかった。

目覚めの太陽の光より黄色がかった光が隣のビルの間をすり抜けて
午後4時のキッチンを染めていた。
僕はキッチンのテーブルでクッキーをかじりながらビールを飲んだ。

木漏れ日のような淡い光が僕の着ている白いシャツを黄色く染めていた。
それは、衣類に染み付いた様々な思い出に優しく感応していた。
 
今日処分したあの色あせた洋服のように。

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