2001年10月03日(水)  利用者と被利用者。
休日。10時に目覚めて特に何もすることがなかったので、
布団にくるまったまま昨夜寝る前に読んでいた小説の続きを読んだ。
昨日電話で約束した女性が1時間以上早く私の部屋に来た。
  
「まだ寝てたの?」
「起きてたからドアを開けたんじゃないか」
「今日、出かけるって言ったじゃない」
「約束の時間までまだ1時間以上ある。僕は化粧をしないから10分前に起きても平気なんだ」
「私も10分で化粧できるもん」
「化粧の話をしてるわけじゃない」
  
彼女は布団に潜り込んできたが、僕達はそういう関係じゃないので、
これから行く場所のことや今読んでる小説の内容や食事はどうするかなど10分ほど話をして、
僕の思っていたとおり、彼女は寝てしまった。
  
約束の時間まであと1時間あったので、僕は布団を抜け出し、
歯を磨いて、顔を洗って、髭を剃った。
音楽を流そうと思ったが、彼女の安眠を妨げるのでやめた。
平日の慌ただしい車の音が窓の隙間から僕の部屋へ入ってきている。
その車と一緒に彼女のイビキの音も聞こえた。
イビキというか歯と歯の間からこぼれる出来損ないの口笛のような音だった。
  
約束の時間まであと30分あったので、小説の続きを読んだ。
  
「ねぇ、クーラー入れてよ」彼女が小さな声で言った。
「いやだ」先月の電気代が初めて1万円を越えたのだ。 
「暑いよ」彼女は布団をかぶったままそう言った。
「暑くても10月なんだ」ニュースキャスターもみんなもう秋ですねと言っている。
「ケチ」
「ケチで結構。今日の食事もワリカンにしよう」
「ケチ」
「コーヒー飲む?」
「あ、飲む飲む!」
「階段降りて買ってこいよ」
「死ね」
「もう時間だよ」
「行きましょ」
  
僕達は食事に行って、僕は不味いパスタを、彼女は美味しそうなピラフを食べて、
ちょっとした買い物に行って、公園に行って日なたぼっこをした。
  
平日の午後の誰もいない公園は、僕達の関係のように、ひどく不自然だった。

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