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| 2001年10月02日(火) ネジ山。 |
| 深夜1時、携帯がまたもや不吉な着信音を響かせる。 もしかすると僕の携帯は深夜にしか機能しないのかもしれない。 そうでないとすれば、僕の周囲の人々は深夜にしか僕の必要性を考えないのかもしれない。 どちらにしても迷惑なことには変わりないが。 「もしもし!よかった!助けてーっ!」 僕はこれと全く同じセリフを9月25日の深夜に聞いたことがあった。 違うところといえば9月25日は深夜2時で、今は深夜1時ということだ。 深夜ということには変わりないけれども。 助けを求める具体的な内容は省略する。助けてーっ!と叫ぶほど深刻な問題ではないのだ。 深夜1時半。彼女は僕の部屋に来た。 シャワーを浴びたばかりで、まだ髪が少し濡れていた。化粧気もなかった。 「旦那さんには何て言ったの?」僕は人妻に対する基本的な質問をした。 「あなたの家に行って来るって言ってきた」彼女は何でもなさそうにそう言った。 僕は彼女の御主人のことをよく知らない。買い物で夫婦で歩いているところを一度見かけただけだ。 だから彼女の御主人の考えもよく知らない。 人妻を独身男性の部屋に深夜1時に行かせることをどう思っていることなんて知る由がない。 「寝るところだったの?」キッチンに立っている彼女は僕の部屋をのぞいてそう言った。 「いや、眠れないから本を読んでいた」と僕は言った。本を読んでいたから眠くなったのだけど。 そしてしばらく話をした。具体的な内容は省略。助けてーっ!と叫ぶほど深刻な問題ではないのだ。 「ちょっと待ってて」彼女は突然話を止め、ドアを開けてどこかへ行ってしまった。 御主人に電話でもしているのだろうと思ったが、彼女の携帯はテーブルの上に置いたままだった。 「ただいま」10分程してから彼女はコンビニの袋を下げて戻ってきた。 アイスクリームとコーヒーとシュークリームとリポビタンDが入っていた。 「こんな遅くにホントごめんね」彼女はそう言って僕にリポビタンDを渡した。 ごめんねと言われてリポビタンDをもらったのは生まれて初めてだった。 「こんな遅くにホントごめんね。リポビタンDでも飲んでもうちょっと私の話に付き合ってね」 ということだと思う。 彼女が動くたびにシャンプーの匂いがした。 その甘い香りは時計のネジ山が噛み合わなくなるように深夜の僕の思考を少しずつ狂わせていった。 |
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