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| 2001年10月01日(月) 白い嘲笑。 |
| あれはまだ山口に住んでいた頃だった。 私は父親の仕事の関係で3歳から4歳までを山口県で過ごした。 いくら「三つ子の魂百まで」と事実を脚色しすぎたことわざが存在しても、 実際その当時のことで憶えている事は、 幼稚園の昼食が食パンとミルクだったということと、 家の前の大きな歩道橋と、 アフロのような髪型をした友達と、 初恋のマキヌちゃんの顔と、 あの夢のことぐらいだ。 あの夢はあれから20数年経った現在でも鮮明に瞼の裏に描く事ができる。 鮮明に思い描くことができるが、それを文章にするというと、 どう表現すればよいのか迷ってしまう。 4歳の僕は果てしない暗闇の中を歩いていた。 暗闇を恐れているわけでもないし、親を捜し求めて泣いているわけでもない。 たんぽぽ組の僕は、暗闇の中を歩くこと自体が当然かの如く淡々と歩いていた。 どのくらい歩いたかわからない。 進んでいたのかさえわからない。その場で足踏みしていたのかもしれない。 周囲は暗闇。僕の目で僕の両手さえ見ることができない完全なる闇。 突然、カメラのフラッシュのように一瞬、白い光が見える。 僕は目を凝らす。暗闇のあらゆるところに一瞬だけ白い光が発する。 4歳の僕は目を凝らす。そして僕はその白い光の形を捉える。 その白い光は、人の顔だった。しかしその顔はどこかしら不自然だった。 目は異常に横に長いし、髪の毛は生えていないし、以上に丸いし、 何よりも、その白い顔は全て笑ったいた。嘲笑うような笑みを浮かべていた。 僕はその時はじめて恐怖を感じた。 その白い光の白い顔は次第に暗闇を浸食していく。 完全なる暗闇が完全なる白い光に染まっていく。完全なる白い顔に制服されていく。 完全なる嘲笑に支配されていく。 僕は逃げた。現実の世界へ走って逃げた。昼食が食パンとミルクの世界へ逃げた。 目を開く。目を開けてもそこは暗闇だった。 右を見ると母親が寝ていた。左を見ると父親が寝ていた。 現実の暗闇に戻ってきた。安堵感が白い光のように、僕の身体を満たしていく。 そして僕は泣いた。深夜に大声で泣いた。 僕の4歳の記憶はまるでビデオを見ていたら突然停止ボタンを押されたようにここで突然止まる。 今でも時々、あの白い顔を思い出す夜がある。 あの白い嘲笑に怯える夜がある。 |
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