2001年09月25日(火)  2時災害(前編)
深夜1時、長い歯磨きを終え、トイレに行き、昼間に干した布団の中に入る。
深夜2時、なかなか寝つけない。昼間、退屈に耐えられず午睡したのが悪かった。
深夜の冴えた空気を伝って救急車のサイレンがやけに大きく聞こえる。
その深夜の悲劇は実際、このアパートの近くで起こっているのかもしれない。
  
突然、部屋の電話が6畳1間の沈黙を打ち破る。
ベルはオークが乱暴に斧を振りまわすように1回、2回、3回、4回鳴り続け突然終わった。
寝呆けているのかもしれない。寝返りをうち、枕に顔を埋ずめる。
  
間髪入れず、枕元の携帯が深夜2時には少々不似合いな陽気な着信音を響かせる。
いつもなら、着信など見ずにそのまま寝てしまうのだが、
救急車のサイレンと、滅多に鳴らない部屋の電話と、不眠の苦痛が、
全てまとまって1つの大きな不安となり、
その不安は上半身を目覚めさせ、僕はゆっくりと携帯を取ることになった。
  
「もしもし!よかった!助けてーっ!」
今年6月に結婚した友人の声、大声で叫んでいるのと寝呆けているので、
最初何を言っているのか聞き取れなかった。
  
「友達と今まで遊んでたら、あの人(ご主人)怒っちゃったみたいで、部屋の鍵開けてくれないの!
今日あなたの家に泊まらせて!お願い!」
「よかった」
「何がよかったのよ!」
僕は救急車のサイレンが僕にこれから振りかかろうとする災難と関係がなくてよかったと言ったのだ。
それにしても僕の周囲の人達は、僕に何の警戒も持たずにいとも簡単に僕の部屋に泊まろうとする。
警戒心を抱かないというのも、よく考えてみれば悲しい話だ。
  
「いいよ。鍵開けとくから勝手に入って勝手に寝ればいい。僕はソファーで寝るから」
「ありがとう。やっぱり持つべきものは友達だわ!その持つべき友達にもう1つお願いがあるの。
ここまで私を迎えに来て!あの人から締め出しくらって泣き出したいのと、歩き疲れたので
もう今すぐにでもここに座り込みたい気分なの。国道沿いにあなたの家まで歩いているから
私を迎えに来て。お願い」
「やれやれ」
やれやれである。深夜2時になぜ僕が国道を歩く人妻を迎えに行かなくてはならないのだ。

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