2001年08月22日(水)  テラサキに会う。
仕事が早く終わったので、シャワーを早めに浴びて、
食欲もあまりないのでインスタントラーメンを食べて、
煙草を吸って、コーヒーを煎れて、もう一本煙草を吸って、
欠伸をして、もう一度欠伸をして、あぁ、やってらんねぇ。と呟いて、
机に向かって、果物ナイフで鉛筆(3本)をこりこり削って、
レポート用紙を前にして、あぁ、やってらんねぇ。ともう一度呟いて、
6畳1間に大の字になり、天井を見上げ、
大学のレポートの事なんて忘れて、誰も知らない場所に行ってみたい。3日間。
3日間でいい。3日以上誰も知らない場所に行ったら、寂しいので。
  
「外向的なくせに孤独を好んでました」
  
テラサキが僕に話しかける。話し掛けているのか、独り言かわからないけれど。
  
「孤独じゃないくせに社交的でした」
  
パラドックスだ。惑わされては、いけない。思考の袋小路へすぐ誘おうとする。
  
テラサキは隣の部屋で正座をして、クリスティの「七つの時計殺人事件」を読んでいる。
僕が仕事から帰ってきてから部屋に入ってきたのか、もともと部屋にいたのかわからない。
部屋の鍵はこれからちゃんと閉めなければならない。
   
「いつからそこに座って七個の時計の謎を考えているんだ」
「死んだ客の枕元に並んでいるということが、怪しいのです」
  
テラサキは眼鏡を外した。僕はテラサキが眼鏡を取ったところを初めて見た。
唇は綺麗な三日月の形をしている。

「何か?」テラサキが首を傾けて言う。
「誰も知らない場所に行きたい。3日間」
「じゃ、私が知ってる誰も知らない場所を教えてあげる」
「それは駄目だ。その誰も知らない場所はテラサキの知ってる誰も知らない場所じゃないか」
「じゃ、私は知らなかったってことにすればいい」
「あ。そうか」
  
テラサキは昔からすごく頭がいい。

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