2001年05月25日(金)  報告君(後編)
「報告します。公園のゴミ箱に空き缶を投げたらゴミ箱の縁に当たってしまって、
結局、ゴミ箱から落ちた空き缶はそのままにして帰ってしまいました」
「ふぅん」僕は人ごとのように言う。
人ごとと言っても、この報告君、実は僕自身が行動した事を言っているのだ。
どこで見ているかわからない。探そうと思った事さえない。
だいたいこういう不可思議な事は何をしたって無駄なのだ。骨折って結局、損だ。

「報告します。燃えないゴミの日に、ペットボトルも一緒の袋に入れて捨ててしまいました」
「悪いか」無論、悪いことだ。
ペットボトルは資源ゴミ。そんなの誰でも知っている。
しかし、現実の理解と実際の行動は往々にして矛盾するものなのだ。

「報告します。空き缶とペットボトルと菓子の袋が入ったビニール袋をコンビにのゴミ箱に捨てました」
「ごめん。悪かったよ」謝って済むなら報告君などいらない。

「報告します。誰もいない道でタバコをポイ捨てしたら、後ろに人が歩いていて気まずい思いをしました」
「うっ」いよいよ僕は気まずくなる。ポイ捨して悪いか。無論、悪いことだ。

「報告します。気になる子の携帯番号をこっそり友人から教えてもらいました」
「メールアドレスもね」たまに開き直ったりする。恋愛しようと思ったら手段など選んではいけない。

「報告します。資源ゴミの日にファッション雑誌の間にエロ本を挟んで捨てました」
「やめてくれよ」と言いながらも事実には変わりない。

「報告します。先ほど、ビールを飲みながら野球を見ている。と書いてありましたが、それは発泡酒です」
「細かいこと言うなよ」見栄を張りたかっただけなのだ。

「それでは報告終わります」
「はいはい」

報告君は天井に昇り、どこかへ消えてしまった。
どっと疲れがくる。大きな溜息をつき、ビール、いや、発泡酒を一気に飲み干す。
日頃、真面目に生きていると思っても、結構悪いことをしているようだ。
報告君と出会って、私はそう思うようになった。
真面目に生きているのではなく、”比較的”真面目に生きているのだと。

今夜も私は小さな小さな罪悪感にさいなまれながら、
苦虫を噛みつぶしたような顔をして頭までスッポリ布団をかぶるのだった。

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