a hermitage
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昨日、チビタが巣立って行きました。
こうしてあの子のことを思うだけで、涙が出てしまいます。
いつも笑っていて、 いろんなことを知るのが大好きで、 新しく習ったこと、知ったことは、毎日教えてくれた。 数学のナントカの定理も、 化学の意味不明の実験のことも。
優しくて、私の体をいつも気遣ってくれていた。 私の愚痴も黙って聞いて、 無理するなよ、がんばってるね、って、頭を撫でてくれた。
たいしたご飯は作れないのに、 いつも「うめー!」って言うんだよね。 お菓子やおかず、最後の一個は「半分こ♪」っていつも分けてくれたよね。
些細なことでもすごく嬉しそうで、 その代わり、些細なことでも悲しくなって涙ぐんだり。
高校生になった今でも、 よちよち歩きの頃と全然同じ仕草や笑顔で、 かわいくて かわいくて ずっと抱きしめていたかった。
引っ越しを終え、私が寮を出るとき、 チビタは「じゃぁね!」と、軽い一言で手を振っただけ。
それでいい。 そうじゃなきゃ困る。 頭では分かっているんだけれど。
巣立つなら、何もかも持って行って、 ココには何も残さないで空っぽにすればいいのに。 部屋の中は、必要なものだけ抜き出して、今まで通りひっくり返ってる。 ソファには脱いだパジャマがそのまま。 あっちにもこっちにも、あの子の生活していた証拠があふれている。
でも、あの子はいない。 もうココでは生活しない。きっと、もうずっと。
通院や習い事のことで、月に何度か会えると思う。 でも、それとこれとは全然違う。 明日は参観日で会いに行くし、 週末は歯医者へ送迎、治療によっては泊まっていくかも。
ほら、うちに「泊まる」んだよ。 もうあの子の本拠地はココではないんだよ。
テレビを観ていても、感想を話す相手もいない。 一人ぼっちだよ、私。
仕事をしている間は、なんとか気が紛れていたけれど、 帰ってドアを開け「ただいま」と言ったとたん、 誰も居ないことに気が付いて、涙があふれた。
一人暮らししてる人なんていっぱいいる! しんでしまったわけでもないし!
そんなこと、わかってる、 わかってるわかってるわかってるわかってる!!!!!!!
わかってるから、人には言えなくて、 わかってるから、思い切り泣いてすっきりしようとしても せつなく涙が出るだけでわんわんと声を上げることができなくて。 ダンナが居なくなった時は、誰がみても「泣いてもいい」立場だったから 気持ちがあふれたときは声をあげて泣くことができた。 今は、寂しいっていうなんて、子離れできないバカ親か、 自分の時間を楽しむこともできないつまらない人間かのようで。
今まで、町で「パパ」を見るのがつらいというシングルの声を理解できなかった。 「居てくれたら」なんて思うことも無かった。 けれど、今は、「もしも居てくれたら、こんな思いはしなかっただろうに。 なんで居ないんだろう、 なんで居てくれないんだろう、」 と、悔しくて仕方がない。 「今頃あの子何してるだろうね」と夫婦で話す、 そんな当たり前のささやかな時も、私には手に入れることができなかった。
慣れるしかない、 1ヶ月もすれば慣れるだろうか。 ご飯も食べるようになるだろうか。 「帰ってくるの?めんどくさい!」って言う日が来るんだろうか。
年をとってもずっと一人はいやだ。 ずっと生活のために働き続けなければいけないのもいやだ。 「将来はまた一緒に暮らしてくれる? チビタの家に呼んでくれる?」 それはちょっと〜と笑っていた。
「家族」と暮らしたい気持ちと、 お荷物にはなりたくない気持ちで、また気分がふさいでくる。
とりあえず、何か食べよう。 電気を点けよう。 友達を招けるように、ちょっとずつ片づけよう。 ココには居ないけれど、いっぱいいっぱいお金がかかるあの子のために、 がんばって働こう。
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