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 わすれられない戒。12
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ココのあらまし説明をつけてみました。
初めての方・概要を知りたい方などは、
>>コチラからどうぞ。
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聞こえてしまった。

『じゅるじゅる』という音。



体は動かないまま。
感覚も、視覚も、
すべてがもうろうとしているなか。



だれかにしがみつきたくて、たまらなくなった。

たまらなかった。


ころしたんだ・・・


ころしたんだ・・・


ころしたんだ・・・


ころしたんだ・・・




その、音は、
きっと、あの、同じ人の、
手術の、音。

細かく砕かれた胎児を、
子宮内から排出するおと。
何かの器械で、
体内から吸引する音。

粘膜質なものを吸い取るかのような、
そんな、音。

もうろうとする意識のなか、
思い出すのは、
いつかテレビでみた、
胎児の命をうばう映像。

こんなことをする結果をまねくようなことは、
絶対にしたくない、と、

そう思ったはずの、アノ映像。

そして、
その音は、
自分の手術にリンクする。

その音は、『別の人』の処置の音だけど、
だけど、
だけど、

それは、アタシと、おなじ処置の、音。
麻酔で眠っている間に、
確実にされた、おなじ作業。


誰かにしがみつきたかった。
何かを握り締めたかった。


下腹部が、鈍く、痛む・・・・・・・。


途切れそうな意識のなか、
言葉にはできない感覚が体と思考を占拠する。
視覚もまともではない。

でも。
でも・・・。

まだ思うように動かないからだを起こして、
荷物をしまっていたロッカーの鍵をあけた。


ベッドのすぐ脇におかれたそれだけど、
落下防止のベッドの手すりにからだをのりだして、
その作業をすることは、

今おもえばかなりむちゃだったのかもしれない。


頭の中を走る、
幾多の映像、音、感情。

涙はなかった。
でも、ききたくなかった。

麻酔で眠っていれば、
聞かずに終わったものだったのに。



アタシはやっと、実感する。
途切れがちな意識のなか、
それだけは、明瞭な感情だった。

アタシ、オロシタンダ。


きもちがわるいきもちがわるいきもちがわるい。
きもちがわるいきもちがわるいきもちがわるい。
きもちがわるいきもちがわるいきもちがわるい。
きもちがわるいきもちがわるいきもちがわるい。
きもちがわるいきもちがわるいきもちがわるい。
きもちがわるいきもちがわるいきもちがわるい。







ロッカーから、
もうろうとしながらもとりだしたものは、

『携帯電話』だった。










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たった四文字のメール。
なんて一方的で、
なんて感情的な。


それだけ打つのが、精一杯だった。
アタシの意識は、そこで再び途切れた。





>>続く。。。。。。。







2004年02月21日(土)
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