2013年07月03日(水)  おくりものをおくりあうこと。(金蘭千里中学校講演・後編)

先週の実践女子大学では質問がなかなか出なくて長い沈黙があったけれど、今回は果たして……。

やはり中学生、なのか。
やはり大阪、なのか。

次々と手が挙がり、質問が途切れることなく30分。

「こんなん聞いてええんやろか」のハードルを飛び越えて、ギャラの質問まで飛び出した。その質問のおかげで、さらに聞きやすくなったようで、素朴な疑問をたくさん投げかけてもらえた。

帰りの新幹線からツイッターにせっせと書き込み、自前ハードディスクから自然消滅する前に外付けハードディスクにお引越。「脳みその出張所」を持ちましょうと今回の講演でもお話ししたところ。

順番はうろ覚えだし、漏れもあるかもしれないけれど、書き留めた質疑応答は以下の11問。

Q1.書けなくなるときはありますか? そういうときはどうしますか?
A1.スランプはあまりないですが、ネタに詰まったときはパソコンの前で唸っていてもしょうがないので、お皿を洗ったり子どもの相手をしたり、他のことをして気分転換します。その間も脚本のことを頭の片隅に留めて心の傘を開いておくと、ふとしたときにひらめきます。
勉強もそうで、気分が乗らないときはいったん離れたほうが集中できると思います。

Q2.脚本は何日ぐらいで書きますか?


A2.90分の脚本を2日で書いたことがあるのが最速です。速さは大事だけど、速ければいいってものでもなくて、粗いと直しに時間がかかって、結局遠回りになります。29文字×26行を一時間で10枚書くこともあれば1枚のことも。考えがまとまっていると速いし、悩むと止まります。映画だと2時間分の脚本を書くのに一か月ほどもらえて、急がなくていいからじっくりいいもの書いてと言われたりします。

Q3.『子ぎつねヘレン』のとき、いくらもらいましたか。

A3.駆け出しでしたが結構な原稿料でした(講演では具体的な数字を披露)。こんなにもらえるのと驚きましたが、かなり時間がかかってるので、これぐらいもらわないと大変ですね。子ぎつねヘレンは、原稿料以上に著作権の二次使用料が大きかったです。地上波で放送されるだけで30万など。DVDを買ったり借りたりしたときの著作権使用料もとても大きいので、最近は違法にアップロードされたものを観れたりもしますが、ちゃんとレンタルして観てくださいね。

Q4.学校で配られたプロフィールにCMソングってあるけど、どんなのを作ったんですか?


A4.冷凍食品は-18度以下で冷凍をという冷凍マイナス18号ソングをYouTubeで見られます。「魚・魚・魚」の歌みたいにいつかブレイクするかもしれないので、どんどん見て話題にしてあげてください。他にやきいもやトマトやちらし寿司の歌も。

Q5.締め切り前なのにアイデアが思いつかなくて進まないときはどうしますか?

A5.頭の片隅に留めておくと、締め切り前のぎりぎりにアイデアが思いつくこともあります。札幌のNHKの脚本コンクールに出す作品を書いたときは、締め切り1週間前に「発症後の記憶の蓄積ができなくなる記憶障害」というのがある、と会社の隣の席の人が読んでいた雑誌で知って、それで書き始めたんですが、北海道とつながらなくてどうしようと思ってた。そしたら、会社に出勤する途中の階段で「雪=記憶だ!」ってひらめいたんです。はかなく溶ける雪と記憶と重ねて、でも、雪をぎゅっと固めて雪だるまにしたら溶けにくくなる。そこから「雪だるまの詩」という作品が生まれました。
最良の案が思いつかないときも、そこで立ち止まらず、代わりの案で先へ進んで、演出やプロデューサーともっといい案を考えます。たまにホームランを打つのではなく安定して打てるのがプロかなと思います。


Q6.日記を書くのと脚本を書くのとどっちが楽しいですか?

A6.映画やドラマになったほうが反響は大きいけれど、日記のファンというのも結構います。20年以上音信不通だった友人が、実はずっとわたしの日記を読んでいて、先日講演を聴きに来てくれました。書いてて良かったって思いましたね。また、日記を読んで、「この人に脚本の仕事を頼んでみよう」とプロデューサーなどが声をかけてくれることも。長い自己紹介みたいな感じですね。

Q7.脚本家になろうっていつから決めてたんですか?

A7.小学生からお楽しみ会といって学芸会の脚本を書いて自作自演したりしていました。でも、脚本家という職業があるのは知りませんでした。夢は小さい頃からコロコロ変わって、教師になる夢もあって教育実習にも行きました。担当したクラスが文化祭でやる劇が偶然わたしが高校時代にやったのと同じ「オズの魔法使い」だったので、演出と振付けを買って出て、朝練昼練放課後練習に燃え、本番では生徒より感激して号泣し、担当教官から「教師がいちばん楽しんでどうするんですか」と教師には向いていないと言われ、コピーライターを経て脚本家に。好きなことを続けてたら仕事になったわけですが、今こうして学校でお話しさせてもらってるし、教師の夢もかなっています。

Q8.出演者に会う機会はありますか?

A8.ロケに行くと沢山話せます。脚本のことで質問されることも。脚本を書き終えたら差し入れ持って行くぐらいしか仕事がないので、差し入れを届けがてら撮影にお邪魔します。

Q9.小説を書いたりはしないんですか。

A9.書いたりしてますが、本はなかなか売れなくて。でも原作者になって自分の原作が映像になると楽しいので、出版社に売り込む漫画の原作を今書いているところです。

Q10.どういうときにアイデアを思いつきますか。

A10.歩いていたり電車に乗っていたりするとき。劇作家も沢山歩くそうです。頭の片隅で考え続けながら歩いてると、ひらめくことが多いです。机の前でひらめくことはあまりなくて、パソコン打つのはまとめているときです。

Q11.映像を観て、脚本と違ってると思うことはありますか。
A11.あります。すごくいいシーンに化けることもあるし、逆に、こんな感情むきだしのつもりじゃなかったのにと違和感を覚えることも。原作者の方も脚本を読んで、同じようなことを感じるのかもしれません。自分の想い描いたイメージと出来上がった映像が違うときは、脚本の指示がうまく伝わらなくてイメージを共有できなかったんだなと反省します。

ギャラの話を聞かれたことで著作権使用料の話ができ、脚本家にいつからなろうと思っていたかと聞かれて教育実習のエピソードを紹介できた。「冷凍マイナス18号の歌」も、「雪だるまの詩」も、質問が石ころ棚の奥から引っ張り出してくれた。

講演は、「おくりもの」のつもりで、相手の心に届くようにと願いを込めて話しているのだけれど、講演のたびに、わたしもたくさんの「おくりもの」をもらっている。

自分の中に眠っている宝物に気づかせてもらえて。
それを誰かの手で磨き直してもらえて。

今日のように質問がたくさん出たり、熱い感想を伝えられたりすると、自分が贈った以上の「おくりもの」を受け取ったような気持ちになる。



映画『子ぎつねヘレン』から生まれた絵本『子ぎつねヘレンの10のおくりもの』のサイン本に添えるメッセージ「生きることは、おくりものをおくりあうこと」のように、講師も教えられて、成長させてもらえる。

講演は、おくりものをおくりあうこと。

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