2012年07月12日(木)  なんだかモヤッとする文京区育成室保育料激変値上げ

はじまりは、7月3日に保育園で配られた一枚のプリント。5歳児クラスの保護者向けに、育成室の料金改定の説明会をやりますという告知と、日時と場所が記されていた。

「ふうん、料金変わるんだー。説明会開くってことは値上げだろうね」

他のお母さんたちも似たり寄ったりな反応だったよう。

そしたら、上の子を育成に通わせているお母さんが
「知ってます? 月額4千円から1万円に値上げするそうですよ」

ええっ、それはまたいきなり乱暴な!
月々6千円、一年で7万2千円、1年生から3年生まで3年間通わせたら、21万6千円の負担増!
わにのだんす』(税込み788円)が274冊買えて、88円おつりが来る!



子育て世代に一冊のわにを買ってもらうありがたさが身にしみているので、わにに置き換えると、わたし的には事の重大さがよくわかる。もっと簡単に言えば、1000円の本を216冊買えるお値段。

これはおおごとだ!
なのに、この、情報なさすぎな説明会告知は何?

同じ保育園のお母さんと、「電気代の値上げや消費税引き上げでこんな大騒ぎしているのに、その何倍もの値上げをしれっとする気なのかー!」とあきれたり怒ったり。

そうしたら、7月9日に文京区のサイトに「修正案」が出された(こちら)。7月6日付となっているので、プリントが配られてから、あちこちから「いくらなんでも!」と非難が押し寄せたのかもしれない。

それによると「激変緩和」の観点から、一気に1万円に上げるのではなく、25年度は千円アップの月々5千円、26年度はさらに千円アップの月々6千円、27年度はさらにさらに千円アップの月々7千円に上げる案に修正したとのこと。

計算し直すと、3年間で7万2千円の負担増。わにに換算すると、91冊買えて、おつりが292円。

当初の3分の1に減って、14万4千円浮いちゃった……と数字のマジックにだまされてはいけない。

激変緩和になってません!

なので、行ってきました説明会。

19時に始まって、区役所職員からの説明が約20分、その後質疑応答が1時間の予定だったのだけど、ツッコミどころ満載の値上げ案に鋭い質問が続出。「あと15分で予定時間」と言われたところで、まだ質問したい人が12名。結局、2時間にわたって白熱の質疑応答が繰り広げられることに。

これが面白かった!

面白がっていいのかわからないけれど、皆さんの質問と区の担当者の答えの応酬を聞いていると、いろんなことが見えてきて、勉強になったし、考えさせられたし、頭も心もフル稼働の2時間。

毎年、確定申告で所得税を取り返したと思ったら、その後に住民税の請求がどかっと来て、試合に勝って勝負に負けた気分を味わっているのだけど、その負けの元を取れているのかどうかの検証をする機会を逃していた。

しっかり納めているんだから、使い道まで見届けないとね。

説明会で何度も出て来た「応能負担」と「応益負担」という言葉。「応能負担」は払える能力に応じて負担する形で、保育園保育料はこれにあたる。一方「応益負担」は受けた利益に応じて負担する形で、育成室保育料はこれにあたる。

保育園から育成室に上がると、保育料のありようも変わる。

で、「応益負担」とセットで出て来た「受益者負担の適正化」という言葉。利益(サービス)を受けている人と受けていない人の間の不公平感をならしましょうという考えだそうで、文京区が出して来たのが、「性質に基づく行政サービスの分類」というざっくりとした4分割。

第1区分(公共的・必需的) 利用者負担割合=0%
公共性が高く、民間での提供が難しく、住民の大半が利用する必需的なサービス
(公園・児童遊園・遊び場、公衆便所)

第2区分(公共的・選択的) 利用者負担割合=50%
公共性は高いが、選択性も高く、特定の住民の生活や余暇をより快適で潤いのあるものとするサービス
(区民会議室、交流館、地域アカデミーなど)

第3区分(市場的・選択的) 利用者負担割合=100%
民間でも提供され、選択性も高く、特定の住民の生活や余暇をより快適で潤いのあるものとするサービス
(響きの森文京公会堂、スポーツ施設、八ヶ岳高原学園施設開放、駐車場など)

第4区分(市場的・必需的) 利用者負担割合=25%
民間でも提供しているサービスだが、住民に必要とされる社会保障的要素を含むサービス
(育成室、幼稚園)

なんとも、ざっくり。0%と50%の間を取って25%なのか!?

質疑応答では、25%の根拠は?に質問が集中。

そもそも当初案の「月額1万円」は、「一人あたり月額42100円コストがかかっていて、その25%」からはじき出されたものらしい。

「4万2100円は何を積み上げた数字?」という質問に、
「年間にかかるコスト5億9628万9千円を22年度4月1日の定数1178人かける12か月で割ったもの」との回答。
6億弱のコストの大半を占める約5億5千円が人件費とのことで、その内訳も示された。

常勤職員の平均給与が806万5千円で、かける49人で約4億。
再任用が一人あたり422万円で5人で約2100万円。
他に非常勤やアルバイト代。

「職員の給与は適正なのか?」の質問が飛んだ。
現場で子どもと接している人が十分にもらっていないのでは、という声。
49人の常勤職員の内訳も気になるところ。
「そもそも人件費を計算に入れるのはおかしい」という声も。

月々4万2100円かかっているという根拠も、25%という料率の根拠も不明瞭。
なので、区が挙げている「1万円」という数字には説得力がない。

でも、区側はこの「1万円」になるべく早く近づけたくて、年に千円ずつ上げるところは守りたい様子。

平成14年から10年間月額4千円を守って来たのに、ここに来て3年連続千円の値上げ。さらにその後も1万円に近づけていきたいという。

わたしもここは黙ってはおれぬと質問。
「せめて5000円に値上げして数年据え置く考えはないんですか?」
答えは「ありません」
「過去に文京区でこれだけ劇的に受益者負担増を強いた例はありますか?」
答えはこれまた「ありません」
もちろん、そういう答え方はしなくて、6%ぐらい値上げした例を出して来たのだけど、「全然ケタが違いますよね?20%級の値上げを3年連続ですよ?」

金額だけでいうと、数年前の保育料の値上げのほうが大きかったけれど、今回問題なのは、その「値上げ幅」。財政状況が悪化しているわけでもないのに、なぜ「激変」値上げを急ぐのでしょう。

くどいですけど、年に月額千円ずつアップ(年1万2千円)の3年連続は、「激変」です。いきなり1万円に比べて「緩和」と呼ぶのはふさわしくありません。

しかも、「減免規定の見直し」により、これまで「義務教育未修了児童がいる世帯は保育料2割減」だったのを廃止するという。つまり、「月々4千円の2割減で3200円」を心づもりしていた世帯は、25年度は「月々3200円のはずが1800円負担増の5千円」になる計算。月々800円が3年分積もると、800円×36か月=28800円。これに先ほどの7万2千円を足すと、3年で100800円の負担増となる。

またまたわにに換算すると、127.9冊。(127冊+おつり724円)



さて、この「2割減額」を受けている人数は?
「現在育成に通っている1144人中、過半数の577人」とのこと。

きょうだいのいる方々、2割減額廃止は大問題です!

一方、「住民税所得割4万円以下世帯は5割減額」を代わりに実施の予定で、こちらが適用されるのは1割程度の予想とのこと。

「文京区の財政状況は厳しくないのに、なぜ今急な値上げが必要なのか?」
「財政が逼迫している目黒区では、今度値上げして8千円になるらしいが、無料の区もある」
「23区でトップクラスの保育料になってしまうが、サービスは充実していない」
「値上げするのなら、運営時間の拡大を。(保育園は7時15分からなのに育成室は8時45分から。子どもに鍵を預けて先に出る親も)」

といった意見が出るなかで、「子育て支援を諦めるのか?」「文京区は子育ての看板を下ろすべき」といった区長への手厳しい意見が目立った。

育休を取り、「イクメン区長」を名乗っている成澤区長は、どういう想いでこの値上げ案を議会にかけようとしているのか。ぜひご本人の口から聞いてみたかった。

「保育料が値上げされたとして、浮いた分の税金は何に使われるのか?」と質問された方がいた。せめて、それが文京区の子育て環境の改善のために使われるのならば、という願い。そう、みんな、自分の財布の心配だけして集まってきたのではない。いきなり子育て世代に「激変」的な負担増を強いろうとしている文京区が、どういうつもりなのか、そこをしっかり聞いておこうと仕事を終えた平日の夜に集まってきた。

不親切なプリントに始まり、親の間を戸惑いや怒りが駆け巡り、これまた急な修正案を複雑な思いで受け止め、親同士で話題にし、家庭で話し合い、今夜の説明会に臨んだ。

その親たちの想いを、受け止めてもらえただろうか。

わたし自身は、かつてなく「税金の使い道」について真剣に考える機会をもらった。

何年か前の保育園保育料の値上げのときは、いつの間にか決まっていて、流されるように受け入れたし、今回の件も、父母の会の役員をしていなかったら、ここまで前のめりにはならなかったと思う。

根拠のない数字にも、進め方にも「モヤッ」とする。子育ての現場から離れた人たちが机の上ではじき出した数字が勝手に目標値にされ、そこを議会で通すための手続きが進められていて、民意なるものは置いてけぼり。

「一応説明会やります」のポーズとも思えるような、あの不親切な告知プリントがそれを象徴しているように感じる。

「今日の説明会はどういう位置づけですか?」と質問された方もいた。説明会で説明責任を果たした、ではなく、ここで出た意見が次の改定案につながるのか。2時間の質疑応答で出た意見を、さすがに「なかったこと」にはできないだろうけれど、成澤区長にも今一度考え直していただきたい。

育成室のある3年間のおかげで仕事を続けられる人は、その後も納税し続けるわけで、今回の「改悪料金案」は文京区に納税する意欲を「激減」させてしまうのでは、と心配している。

説明会に出てみて、値上げ案が「しく」だという想いを強くしたけれど、区民が集まって区政に声を届ける、こういう機会があるのは良いなと思った。おそらくこれまでにも機会はあって、わたしが見過ごしたり尻込みしたりしていたのだろうけれど、行って良かったと思ったし、これからも機会があれば首を突っ込んでいこうと思った。

たまたま父母の会つながりで最近メールでやりとりをしていて、お互い「会いたいですね」と言っていた区議の海津敦子さんがこの問題にがっつり取り組まれていて、説明会の後にお話しできた。とても刺激的で勉強になりましたと感想を伝えると、「区議会はもっとネタの宝庫ですよ。ぜひ見に来てください」と海津さん。

帰り道、「たまのおかげで、普段なら行かないところに行けたよ。ありがと」と言った。

追記(2012年9月13日)
ちょっと待った!
この唐突で強引な値上げ案が9月の議会に提案され、可決されようとしています。これだけの激変値上げでありながら、より影響を受ける4歳児クラス以下には、説明会のお知らせもされていません。急いで可決する理由はまったくないので、じっくり議論を、そして、納得のいく根拠を示してもらえるよう、文京区に声を届けたいと思います。

区民の方も、そうでない方も、こちらのフォームから声を届けられます。9/19に行財政システム調査特別委員会で減免規定の見直しが、9/24の文教委員会で育成室保育料の改定が審議、議決されるようです。時間がありませんが、会議室の机の内側だけを見て出て来た根拠のない数字に、生活者の実感の声を届けて、ブレーキをかけてください。

2010年07月12日(月)  7/21多摩で『ぼくとママの黄色い自転車』野外上映
2009年07月12日(日)  朝ドラ「つばさ」第16週は「嵐の中で」&「ラジオぽてとin渋谷」
2008年07月12日(土)  ログ解析〜みなさんどこから飛んで来るの?
2005年07月12日(火)  『子ぎつねヘレン』打ち上げで ipodをゲット
2003年07月12日(土)  15年目の同窓会
2002年07月12日(金)  『真夜中のアンデルセン』小原孝さんのピアノ収録
2000年07月12日(水)  10年後に掘り出したスケジュール帳より(2010/11/29)

<<<前の日記  次の日記>>>