2011年05月02日(月)  豊島でアートとジャムとカフェの小豆島3日目

瀬戸内の明るい陽射しが目覚まし。朝食は、バターがたっぷりしみこんだトースト。豆腐とわかめとプチトマトのサラダを柚子醤油で。朝から体がキレイになりそうな生ハーブティー。そして、いちご。

今日は、豊島(てしま)で過ごすことに。

土庄港から宇野行きフェリーに乗り、最初の港、唐櫃まで30分。さらに20分乗ると、豊島のもうひとつの港、家浦に着く。


降りると地図ぐらい配っているだろうと思ったら、立て看板の地図があるだけ。「美術館まで1キロ」と書いてあるけれど、どっちへ行けばいいのか表示がない。シャトルバスを待ち、美術館前で降りる。土地はたっぷりあるのに、美術館をだいぶ通り過ぎたところにバス停がある。

観光客に迎合していない。親切すぎない。

親切すぎるサービス過剰な観光地に、良くも悪くも慣れてしまった身には、新鮮。この島の楽しみ方は自分で開拓せよということだ。いざ、ディスカバー・テシマ!

そういえば、昨日訪ねた小豆島のカフェOhLiveも道路に看板ひとつ出ていないのに、ひっきりなしにお客さんが来ていた。求める人は自分の嗅覚で探り当て、たどり着く。


予備知識なく入った豊島美術館(設計:西沢立衛)は、いわゆる作品が並ぶ美術館ではなく、館がアートそのもので、その胎内で、作品(内藤礼)の鼓動と体温を体感するようなことになっていた。胎内と何気なく書いたけれど、子宮や命の芽吹きを連想させる空間だった。あるいは、太古、わたしたちの祖先が暮らした洞窟の中のような。

後で、作品の名が《母型》だと知った。素材は「地下水、コンクリート、石、リボン、糸、ビーズ」とある。

ゲルニカだって海を渡れるけれど、この作品は、豊島の外には連れて出せない。見たければ、豊島に来るしかない。島の自然に溶け込む半地下のオーバルな建造物も大地に埋まった恐竜の卵のよう。


併設のカフェ&ショップで食べた米粉のドーナツが美味。レモンクリームといちごジャムがのっかっている。


バスをつかまえ、家浦港へ。こちらの港のほうが圧倒的に栄えている。港前のレンタサイクル屋の前に求めていた地図やリーフレットがずらり。この近くで見られるものは何がありますか、とそばにいた地元のおじさんに聞くと、3分ほど歩いたところに食事のできるアートスペースがあると教えてくれ、ついでにトラックの荷台に乗せて、そこまで連れて行ってくれる。たまは初めてのドナドナ体験に興奮。


しましまの「イル・ヴェント」の奥にある「100歳の手ほか」(木下晋)をまず鑑賞。国内最後の瞽女として知られた小林ハルさんの手や表情の陰影を22段階の濃さの鉛筆で描き出している。たまは古い家屋に興味津々。急な階段に登ったまま動かない。すだれ状のふすまは、わたしにも珍しい。「ここは薬屋だったんだよ」と受付のおじさん。島の他の見どころも教えてもらう。


「しましまの家」「ジグザグの家」「チカチカの家」とたまが名づけた「イル・ヴェント」は民家がアートに。鑑賞料300円だけど、飲食(テイクアウト含む)の場合は鑑賞料なしで楽しめる。


見渡す限りのしましま。アートの中で食事を楽しめる、というより自分もアートの一部に。着るものによって溶け込んだり反発したりする。二階もしましまのチカチカ。


中庭も厨房もトイレの外も中も隅々まで作品。トイレという表示もなく、ドアも溶け込んでいるので見つけられない人多し。その不便が楽しい。


パエリアランチは売り切れで、キッシュランチとケークサレランチを。各1000円、プラス200円でコーヒーか紅茶がつくが、お冷やとほうじ茶がセルフサービス。最近あちこちでレシピを見かけるケークサレは、塩味のおかず系パウンドケーキといったところ。キッシュの卵度を下げて粉度を上げた感じともいえる。このケークサレ、キッシュともに期待以上。つけあわせやスープもとてもおいしかった。


「てっぱん」神田栄治役の赤井英和さんの4度目にしてついに実現したスタジオパーク出演をワンセグで見つつ、シャトルバスで清水前へ。湧き水が飲めるところにある作品「空の粒子/唐櫃」(青木野枝)を見過ごして有名な「島キッチン」(設計:阿部良)まで来てしまい、受付にいたお兄さんに聞いて、引き返す。このお兄さん、たまを見るなり、ちょっと待っててと奥に引っ込み、ペロペロキャンディーを持って戻って来た。たまはたちどころに心をつかまれ、以後、何度も相手をしてもらうことに。


島キッチンに戻り、昨日今日限定のジャム作りのワークショップに参加。まずはシール台紙にハンコやペンでオリジナルのラベルを作りつつ、調理の順番待ち。


イチゴを量り(60gで約4個)、へたを取って包丁で縦半分に切り、イチゴの重さの30%の砂糖を入れ、レモン汁小さじ1を加え、スパイスを12種類の中から選んで加え(たまはカルダモンを選んだ)、その都度かき混ぜる。


鍋を強火にかけ、沸騰したら火を弱め、イチゴが白くなるまで煮詰める。熱いうちに瓶に空け、蓋をする。以上の作業をほとんどたまが担当。包丁にも初挑戦。実に生き生きと、いい顔で。明日の朝はバターのしみこんだトーストにジャムで。

島キッチン脇の土蔵にて「Your First Colour」を鑑賞。スイスのアーティスト、ピピロッティ・リストによるビデオ・インスタレーション。インスタレーションと呼ばれるアートはわたしには難解なことが多いけれど、好きに刺激を受け、解釈すればいい。丸いスクリーンに13分ほどの映像が映される。見上げるうえに、ストーリーのある映像ではないので、たまには難しいかなと思ったら、それなりに面白がって観ていた。

豊島のアート作品一覧はART SETOUCIにて。豊島をはじめ瀬戸内の島々のアート作品を美しい写真と詳しい解説で紹介しているので、興味をかきたてられるはず。


島キッチンでランチ第二弾。おいしいと小豆島で噂を聞きつけたキーマカレーをセットで(季節のサラダとおかずの茶碗蒸しがついて1200円)。


食後のデザートは。苺のプチシューとヨーグルトムース。単品300円をドリンクセット700円にして。

結局、2時間以上島キッチンで過ごし、帰りがけにたまが心奪われたお兄さんに声をかけると、バスが来るまで時間あるなら、カゴ作りを見ていけばと言われる。刈ってきた蔓でカゴを編んでいるおじさん。さっきのジャムの先生(大阪から来ている料理研究家のさん)が、ここでは生徒。「何作りよるん?」とおじさんの同世代の友達が冷やかしに来る。どの世代も生き生きと、実に楽しそう。いいな、島。いいぞ、島。束の間だけど、島の時間の流れを感じられて、うれしかった。


バス停(木造六角形のしっかりした建物)の横に、「ご自由にお使いください」スペースが。ここでお弁当広げたら気持ちよさそう。

帰りのフェリーはうとうと。港に着いて宿まで1キロ半歩き、今日は1万2千歩。たまは今日もドラゴンロードへ行き、おしりの下に敷くダンボールをもらって帰ってきた。持ち手の紐がついていて、「そういちろう号」と書いてある。

夕飯は昨日のお好み焼きの残りの焼きそば。

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