2008年10月06日(月)  『食いタン妻』と『百均探偵』

友人からの食事の誘いに「食いしんぼの妻も喜びます」とメールを返信したダンナが、「食いしんぼ妻って、なんかドラマにならない?」と言い出した。制作とは畑違いの人だけれど、わたしの企画を聞かされるうちに「これぐらいなら自分にも思いつく」と妙な自信をつけたようで、ときどき思いつきを投げかけてくる。「食いしんぼ妻って、どういう話よ?」と突っ込むと、「君みたいな食い意地の張った妻が人が困っているところに現れて、そこの家にあるもの遠慮なしにむしゃむしゃ食べて、悩み聞いたりして解決する話」と言う。がめつい食いしんぼ妻のキャラクター設定を聞いていると、わたしはこんな風にダンナから見られているのか、とガックリするのだけど、わが妻をモデルにしたドラマで視聴率を稼げると思っているのか? 

ダンナ「いかにもおいしそうに食べるところが共感を呼ぶんだよ。
    毎回おいしそうなものを出してさ。
    その食べものが問題解決とつながってたりするんだな」
わたし「ただ悩み聞くより、事件もののほうが面白くない?」
ダンナ「いいねっ。食べたらひらめく食いしんぼ妻」
わたし「それって『食いタン』の探偵が人妻になっただけじゃないの?」
ダンナ「あ……」

こうしてダンナのひらめきは膨らませる前にしぼんだ。
企画会議でもよく話題になるけれど、いいこと考えた!と膝を打っても、突き詰めていくと、どこかで聞いたことある話になることは多い。パクリとか真似とかいう以前に、人が考えることって自然に似てしまう。見たことない話を考えるのって大変だ。

妻ものでいえば、以前『白鳥の湖』を観に行った後に、並び席で鑑賞していた「かよちゃんのお姉さん」が、「私、勘が強いの」と言い出した。「一目見て、浮気しているとか見抜いちゃう」と言う。「そういう主婦が主人公の話ってどう、今井ちゃん?」と聞かれて、昔書いた企画『百均探偵』を思い出した。身の回りのものはすべて百円均一ショップでそろえ、それらをアレンジして素敵に暮らすやりくり上手主婦が、百均グッズを手がかりに主婦的ひらめきを発揮して事件を解決するというもの。探偵ドラマのネタを求められて何本か書いたなかで、これがいちばん好感触だった。というか、これ以外は「目新しくない」という理由でまったく引っかからなかった。他には『ガーデニング探偵』や『ペット探偵』といった案を出した覚えがある。『ペット探偵』は迷子のペット探しをするペット探偵が事件も解決する話なので、正しくは『「ペット探偵」探偵』か!? 

『百均探偵』もそれ以上は進まず、デビューしたばかりだったわたしは「二時間ドラマのネタじゃないかぁ」とあっさり引き下がった。転んでもタダでは起きない今だったら、「30分のシリーズ、いや10分とか短いシリーズならどうだ? そのほうが、かえって百均らしいお手軽感が出るかも」と気を取り直してプロットを書き直し、プロデューサーを追っかけるのだけど、今度は書く時間がない。でも、3分クッキングみたいな超ミニ枠だったら……。日常に潜む素朴な謎を解く一発芸。ヒマを見つけてネタを書きためてみようか。かよちゃんのお姉ちゃんをブレーンにして。『食いタン妻』よりは、きっと新しい。

2007年10月06日(土)  マタニティオレンジ188 フミキリン
2006年10月06日(金)  マタニティオレンジ15 がんばれ母乳部
2005年10月06日(木)  行動する芸術家・林世宝さん
2004年10月06日(水)  ローマの一番よい三流のホテル
2002年10月06日(日)  餃子スタジアム

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