2007年05月10日(木)  遠崎さんとGOGO!イゾリーナ

広告会社に入社したグループのボス(クリエイティブ・ディレクター)だった遠崎さんが三月に退職した。今後の連絡は会社ではなくこちらへ、と書かれた個人用メールアドレスには数字の5が並んでいる。「GOGO自由人!」の開放感がこんなところにも現れている。遠崎さんはシャイな人で、「俺についてこい」と子分を作るタイプでもないのだけど、ひそかな人気があり、直属の部下だったわたしは「遠崎さんと飲みたいんだけど、セッティングして」とお願いされたりする。今夜は、会社時代から仕事を超えて親しくしているアートディレクターのE君とCMプランナーのT嬢の夫妻と営業ミチコとわたしで遠崎さんを囲むことになった。場所は銀座のISOLINA(イゾリーナ)。ISOLAの系列で、ナポリピッツァが自慢。

トレードマーク(!?)の水道橋博士風サイドのみロン毛をばっさりと刈ってスキンヘッドになった遠崎さんを見て、思わず「若返りましたね!」。これまでは頭頂部のツヤツヤについ目が行ってしまっていたが、健康そうな肌の艶にも磨きがかかって見え、はつらつとした印象。見た目もGOGOになっている。これでサングラスをかけ、数年前に免許を取って乗り回しているシルバーのオープンカーから声をかければ、若い女の子だって引っかかりそうだ。

遠崎さんといえば、「さわやかテイスティ I feel Coke」のコピーの産みの親。それまでアメリカの代名詞のようだったコカ・コーラを日本の日常生活の場面に溶け込ませたキャンペーンは、日本人とコークの距離を一気に近づけた画期的なもので、二十年以上経った今でも覚えている人は多い。わたしもその一人で、高校の同級生と「どうやったらあのCMに出られるんだろう」と噂しあったりした。ジョージアの「男のやすらぎ」キャンペーンも遠崎さんの発案。このアイデア出しにはわたしも下っ端コピーライターとして関わったのだけれど、「コーヒーのCMといえば男性タレント。でも、めぼしいタレントはすでに他社に押さえられている。だったら、女性タレントで行こう」と発想を切り替え、「コーヒーを飲んでやすらぐ男」ではなく。「コーヒーを飲んでやすらぐよう、男を誘惑する女」を主役に据えた。当時はまだあまり売れていなかった飯島直子を強く推したのも遠崎さんだったように記憶している。そんな昔の仕事の話をする遠崎さんは実に楽しそうで、冒険談を聞いているようでこちらも楽しかった。

遠崎さんとは何度も飲みに行ったことがあったけれど、わたしはいつまで経っても子ども扱いされていた。車の免許を取って新車の助手席にどの女性を最初に乗せるか、という話になったときも、わたしが立候補したら、「今井を乗せたら誘拐になる」と却下された。そう言われたときは、とっくに三十を超えていたのだが。「そういえば、一万円で追い返された事件もありました」。いい機会だと思い、今夜のテーブルで遠崎さんに詰め寄った。「何なに? そんなことがあったん?」とE君が面白がる。二次会が終わり、まだ飲みたかったわたしは「もう一軒行きましょうよ」と遠崎さんの袖を引っ張ったのだが、遠崎さんはタクシーをつかまえ、「これで帰りなさい」とわたしに一万円札を握らせて去ったのだった。「一万円で一緒に飲もうって誘われるってのは聞くけど、一万円出してまで帰ってほしかったんだ、ってショックでした!」と十年以上前の出来事を思い出して言うと、「何言ってんだよ。今井、無茶苦茶酔っ払ってて、歩くのもやっとだったんだよ」と遠崎さん。「え?」とまるで記憶にないわたし。「もう一軒なんてとてもムリだと思ったから帰したんだよ」。誤解も解け、子どもを預けているのでお先に、と立ち上がったら、ひさしぶりのワインでしっかり酔っ払っていた。出口でお店の人に「傘は(どれですか)?」と聞かれて、「階段は持ってます」と折り畳み傘を示し、千鳥足で階段を下りながら、「あ、傘は持ってます、だった」と言い間違いに気づいた。

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