2005年05月06日(金)  吉村公三郎作品『眠れる美女』『婚期』

一昨日の夜、一緒に飲んでいたご近所仲間たちと大塚『串駒』から歩いて帰っていたら、突然T氏の姿が見えなくなった。鉄道と同じぐらい映画を愛するT氏は、日頃から「今井さんはもっと映画を観るべきです!」と口酸っぱく言ってくれる一人だが、千石の三百人劇場まで走って、チラシを2枚取って舞い戻ってきた。

『吉村公三郎 女性映画革命』(4/16〜5/14)と『東宝娯楽映画のエース 千葉泰樹』(5/15〜29)。言ったら憤慨されると思ったので言わなかったが、どちらの監督も知らなかったし、もちろん作品も観ていない。勉強不足を反省するとともにT氏の親心に感謝して、昨日は『眠れる美女』、今日は『婚期』と吉村作品を二本観た。三百人劇場は、家から歩いて行ける距離。数えてみたら六百歩で着いた。ちなみに劇場の最寄駅は三田線の千石だが、駅と劇場の間に新しくできたカフェの名は、間を取ったのか「八百コーヒー店」という。ちょっと気になる存在。

『眠れる美女』は川端康成の原作を新藤兼人が脚色。全裸の眠れる美女の傍らで一夜を過ごせる館があり、他の客からの紹介でしか客になれない。客の男同士は友人であり、「最近行ってる?」「どう?」などと情報交換する。この設定は面白い。美女たちは「決して目を覚まさないようによく寝かせてある」のだが、客は皆、枯れた老人たちで、何も手出しはできず、規則正しく寝息を立てる美女の寝顔を眺めながら、若かりし頃の恋に思いを馳せる。館の雰囲気がミステリアスで、障子に映る影の怪しさも効果的だし、音楽もあざとく盛り上げてくれるのだが、まだ何かあるぞと期待させたまま終わってしまった。主人公の老作家が通うたびに違う美女が用意されるのだが、いつかその美女が老作家の適齢期の娘になるのではと勝手に想像してドキドキしていた。
眠れる美女
1968年(近代映画協会) 96分 白黒 シネスコ
監督:吉村公三郎 原作:川端康成 脚本:新藤兼人 撮影:佐藤昌道 
音楽:池野成 美術:薩本尚武 出演:田村高廣、山岡久乃、香山美子、八木昌子、松岡きっこ、北沢彪

今日観た『婚期』は、水木洋子脚本。先日、あるプロデューサー氏に「水木洋子の会話はすごくいいよ。勉強になる」とすすめられたのだが、去年観た『怪談』にはほとんど会話がなかった。というわけで会話劇に期待して観に行ったのだが、会話だけでこれだけ笑いが取れるとは! 嫁に行けない適齢期の姉妹の本音トークが、女中のばあさんの嘆きが、二股男を追い詰める女のバトルが、どうしてこんなに面白くなるのだろう。思わず手をたたく人が続出し、ときには拍手になる。台詞のうまさに拍手が贈られるって、すごいことだ。わたしもよく笑った。笑いながら嫉妬した。観た後で最新号の月刊シナリオをめくったら、折良く水木洋子さんの記事があり、『婚期』のことも紹介されていた。観るべし、ということだったのだろう。
婚期
1961年(大映東京) 98分 カラー シネスコ
監督:吉村公三郎 脚本:水木洋子(キネ旬脚本賞) 撮影:宮川一夫 音楽:池野成 美術:間野重雄 出演:京マチ子、若尾文子(ブルーリボン賞主演女優賞)、野添ひとみ、船越英二、高峰三枝子、藤間紫

2002年05月06日(月)  古くても新聞

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