2003年12月20日(土)  SLばんえつ物語X’masの旅 1日目:山都〜鹿瀬

今年もいろんなことが起こりそうだと思っていたけれど、SLに乗ることは予想していなかった。ご近所仲間のT氏が企画した「SLばんえつ物語X'masに乗る旅」に乗っかり、思いがけなくSLを体験をすることに。

T氏のことは先日「時刻表マニア」と紹介してしまったが、鉄道ファンと呼ぶのがふさわしいらしい。「鉄ちゃん」という呼び方もあるそうで、主流は「撮り鉄」だけど、「私は数少ない『乗り鉄』です」とT氏。電車話が肴の「飲み鉄」、沿道から電車に手を振る「振り鉄」などという応用語も。ではわたしは電車をネタに「書き鉄」になるとするか。

7:18上野発の「とき」に乗り込み、ばんえつ物語号の待つ新潟へ。寝不足がたたって車中爆睡。その横で同行の7人は持参の酒とお猪口で宴会開始。途中「トンネルを抜けると雪国」になったとか、「亀田製菓の近くであられが降った」などとは露知らず新潟着。

ホームには、おおっ、鼻先にリースを飾ったSLばんえつ物語号が。ちらつく雪が黒い車体に映え、にわか「撮り鉄」してしまう。今回は本来牽引するはずだった「C57」(シゴナナ)が直前に体調を崩して回復のめどが立たず、「走行取り止めか!?」とやきもきさせられた。結局、わたしにはより馴染み深い「D51」(デゴイチ)が代役を務めることになり、「CでもDでもEです」と同行者K氏の名言。某代理店のスローガンのようだけど。ちなみにC、Dというのは車輪の数(Cは3、Dは4)を意味するとか。

遅れた電車から乗り換える人を待って、予定より40分ほど遅れて10:20出発。ホワンと汽笛を響かせ、シュッポシュッポと会津若松方面へ。車中ではT氏に「スジ」と呼ばれるダイアグラムの解説を受ける。縦軸に走行距離、横軸に所要時間を取り、線でつなげたもので、「スジが立っている」ほどスピードは速いことになる。逆は「スジが寝ている」。転じて「あそこの窓口はスジが寝てる(作業が遅い)」といった使われ方もあるとか。ダンナに言われないように気をつけねば。

窓の外は一面の銀世界。昨夜降ったばかりの深雪なので白がきれい。ガタンゴトンという心地よい揺れを楽しみながら、雪見酒。途中、停車しないはずの駅で一時停止すると、ホームでT氏の鉄仲間がこごえていた。シャッターチャンスを狙って待ち構えている撮り鉄さんには、到着の遅れはこたえたのでは。デゴイチは挽回する素振りも見せず、黙々と(そしてモクモクと)自分のペースで走り続ける。

プレゼント大会(賞品は特製のピンバッチ、カレンダー、クリアファイル)、サンタによる風船大道芸、記念乗車証と絵葉書の配布などあり、乗客を飽きさせない。これで通常料金なのだから、指定席があっという間に売り切れたのも納得。8人分の座席をおさえたT氏、乗り鉄の面目躍如といったところ。

1時間遅れで「そばの里」山都(やまと)着。予約しておいた地元の山都タクシーが待っていてくれた。「駅で10分(この日は7分)停車する間に先回りして、鉄橋を渡るところを撮ろう」というT氏のスペシャル企画で、急いで鉄橋下へ乗り付け、自分達が乗ってきたばんえつ物語号を撮る。雪、川、鉄橋、SL、煙、なんとも絵になる。タクシーは鉄橋を後にし、そば屋が13軒連なる「宮古」へ。眉はないけど笑いのセンスはある運転手さん、「ここが国道かってとこ走ってんだべさ」とお国言葉で突っ込みを入れながらのドライブ。

着いたそば屋は「入中島屋」。ここの料理を思い出すと顔がにやける。わらび餅のような歯ごたえの刺身こんにゃく、しっかり味のするきのこ、貝柱のだしがきいた野菜の煮物「こづゆ」など、出るものすべてがおかわりしたいおいしさ。そばを食べられないわたしには炊きたての舞茸ごはんが出されたのだが、皆が「わんこそば」する横で、わたしも「わんこ飯」してしまう。

ここのご主人は「山菜名人」だそうで、熊の住む山に分け入り、山菜やきのこを採ってきて出している。先日熊と格闘した折、深手を負い、ひと月入院したばかりとのこと。とても愛嬌のあるおじさんで、「こんなの食べたことあるか?」とかぼちゃと小豆を煮た「いとこ煮」も出してくれた。田舎の親戚の家に遊びに行ったような雰囲気で、ほんとに楽しい食事になった。そばは食べられないけど、また行きたい。

山都から再びSL。元来た方向に1時間ほど揺られ、日出谷駅着。ホームには、地元の方々が飾りつけたクリスマスイルミネーションと雪だるまがお出迎え。宿泊は鹿瀬温泉赤崎荘。温泉で「すす」を落とし、名物のしし鍋を食べた後、お楽しみのクリスマスプレゼント交換。最後にやったのは何年前なのか、やってみると、予想以上に盛り上がった。ワイングッズ、旅グッズ、グルメ本、色もの……贈り主の人柄と受け取り手との組合せの妙が面白く、「来年もやりましょう」となる。

わたしが昨晩用意した「オレンジとレッドのゼリーに植えたアイビー」はT氏にもらわれ、わたしはK氏の「2004年當用日記」を贈られた今回の旅に参加したメンバーで集まるようになったのは、今年の後半から。好奇心旺盛、話題豊富な人たちで、おかげでずいぶん楽しい年になった。来年の日記に、このメンバーとの想い出を綴れることを願う。早起きだったにも関わらず、話は深夜まで尽きなかった。

2002年12月20日(金)  生爪様
2001年12月20日(木)  幸せの粒

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