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空想妄想いろいろ日記
青木カナ
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2006年03月04日(土)
一日雪(長編になりました)。

 今日のメインイベントは夜のオペラ。いや、演奏会形式『ラインの黄金』。だから午前中〜午後早めまでがんばってからすこし部屋で休み、6時ごろ出ようねと話していました。
 起きてみたらまた雪だよ〜。あまり粒はおおきくないのですがかなりの密度で降っています。フロントで傘を貸しましょうと言われたけど、傘をさすことによって足元がおろそかになるのが怖い。だからどんどこでかけました。

 ミュンヘンに行ったらぜったい食べて! と言われていたのがヴァイスブルスト、いわゆる白ソーセージです。ホテルのひとにも聞いてみたら、連れがもってきたガイドブックにも載っているお店がお勧めということでした。
 朝10時なのに店内はほぼいっぱいです。日本語メニューがあるってことで気楽にしていたら、入り口のところに吊ってあるだけのようで、まあヴァイスブルストは決まりあとは・・・・・・と考えていたわたしたちに威勢のいいちょっと年かさのウェイトレスさんが。なんか、ぱんぱん決められてしまいました。
「ヴァイスブルスト! ヴァイスビーア(うろ覚え)!」




 これは珍しく茹でるソーセージだそうです。皮をつるんと剥いて食べました。やわらかくておいしかった。しかし、一本いくらなんだったらまあひとり一本でもよかったかな。

 店内にはサッカーのユニみたいなのを着た集団がちらほらいます。バイエルンミュンヘンかな? という赤とか、んー・・・・・・ハンブルクか? というのとか、第三のとか。週末だし試合があるのかな、でも3チーム分・・・・・・? こうしたひとびとは次の目的地への移動地下鉄ホームやその後も出現しました。けっこう瓶ビールラッパ飲み率が高く、仲間で盛り上がって奇声をあげたりホームで歌ったりであります。

 さて、今回のメイン美術館のひとつレンバッハハウスへ。最寄り駅はケーニヒスプラッツ、「王の広場」ってところかな。レンバッハが19世紀末にここに自分の邸宅を構えることにした理由である、数々の古代建築(を模した)に宿る美術館・博物館が迎えてくれました。もちろん雪に覆われて。

 レンバッハの邸宅とコレクションの名残も有名ですが、それよりもここを高名にしているのはカンディンスキーやフランツ・マルクを中心とした表現主義的芸術運動・青騎士Die Blaue Reiterの充実したコレクションです。1957年に大規模な寄贈が行われたとか。ここはミュンヘン・ウェルカム・カードのおかげでひとり4ユーロ。そして3ユーロだったかな、で英語のオーディオ解説を借りました。

 ロシアから出てきてすぐ〜青騎士前後の実験時代〜個人的絵画言語を確立した時代まで、カンディンスキーの作品の変遷をたくさんの作品でたどれたのがよかった。もちろんマルクの描く「虎」をはじめとする動物たちや、マッケそのほかも好きです。ここでも最新の特別展以外は写真OKだったので、解説を聞く→メモ→写真なんていうのを繰り返しました。写真は「虎」。




 友人とは12時半にカフェで待ち合わせ。その前に売店で英語のガイドとか絵はがきとか、おおーなんと40ユーロが10ユーロに値下がりしてる! の収蔵品関係CDロムを買いました。あとでちゃんとみたら1997年のもので、win3.1および95適応じゃった。でも見れればよいんである。

 パニーニなどで軽く昼を済ませ、午後は別れて行動することにしました。友人はお土産などを探しに。そしてわたしはもうひとつの世紀末の館、ヴィラ・シュトゥックへ。最寄り駅といっても徒歩7分くらいのところで、しかも最初のうち反対側へ歩いてしまいちょっと寒かった。もちろん雪は続いていたし、ほかに外に出ているひとは橇で遊ぼうとでかける家族連れくらいでしたから。しかしまあけっこうご機嫌で、夜見るのとは作品は違うけど作者同じだもんねの『トリスタンとイゾルデ』の最後の「イゾルデの愛の死」なんか口笛で吹いたり脳内でふんふん言ったりしながら歩いていきました。

 ヴィラ・シュトゥックは同時代への嫌悪と失われた古典古代への回帰願望、ひとりだけの世界への沈潜の世界です。今は改装して主に世紀末美術などの特別展スペースもあるのですが、ああーラファェル前派の展覧会は9日からなのね・・・・・・。というわけで見ることができたのはヴィラの公開分5室(くらい)と、4階にあるアール・ヌーヴォーのガラス作品だけでした。

 そこからは、今度は歩いて帰ってみようか、ひょっとして20分くらいじゃない? と思って。でもまあ雪続いてたし、まあまあの市電を見つけたので半分くらいは乗って帰りました。それからは休憩。そのうち友人も帰ってきました。

 オペラ、いや演奏会形式オペラは8時開演。でもサイトには[7時から物語の概要を紹介するミニ劇がある]と書いてあったし、月曜日にチケット引き取ったときの係のおねえさんもこれは[ある]と言ってたもんねー7時に行かないと! とはりきり、6時に出ました。しかし歌劇場近くのレストランで席が決まるのがちょっと遅くなって、ものすごい勢いで食べました・・・・・・満腹中枢が刺激されて「食べた」というシグナルを送ってくるまえに出てしまったよ。

 しかしおかしい。ぜんぜん開場しないのである。どんどんひとが集まってくるんだけど・・・・・・。
 やっと7時直前になって入場がはじまりました。入っていろいろ分かれていくなあと思ったら、わたしたちは左のほうを指示されました。行ってみるとクロークです。このクローク、ブロックごとに利用していい場所が決まっているのです。おお合理的。

 で、劇はどこよ?
 聞いてみたのですが埒があかない。それもそのはず、わたしたちはドイツ語ができず、案内係のひとびとは英語ができないのです。ようやく[できる]らしいひとを連れてきてくれたと思ったら・・・・・・
「そんなのはありません」
「え? でもサイトには書いてあったし、チケット引き取りのときに確認したけどあるって言ってました。こっちもストなの?」
「いや、もとからありません」
「オペラの内容を紹介する劇って」
「新しい作品やなじみのない作品についてはそういうのをやることもあるけど、こんな有名な作品の場合はありません。みんな知ってるから」
・・・・・・むう〜。もういいよ・・・・・・ないっていうならもういいよ・・・・・・。

 というわけで気を取り直して、歌劇場探検をしました。
・地下トイレとその前のパウダールームはだだっぴろい。なんか寒いくらい。べつに豪華じゃない
・随所に胸像がある。有名指揮者だったり、作曲家だったり。さすがにワーグナーは中心的な場所にあった。それから、たぶん名歌手たちが得意な役に扮してる肖像画があった。
・ホールへの入り口ごとにちいさなテーブルがもうけられ、そこにプログラムなどの販売物が置いてある。販売員もいる。これ、5メートルと離れてない場合がある。逆にホール内の案内係はいない(みたい)。
・おそらくほかの建物と同じように空爆でやられたのを直したのだろう、豪華なところとすっきりすかすかのところがある。もうすこし異空間ぽくてもいいところ。
・ローテンブルクに次いでわが同胞の数が多かった。
・ドイツのなかでも南のほうが服装が保守的というのを読んだけど、たしかにドイツのひとらしいひとたちはわりときっちり装っている。男性は基本、スーツ。女性はドレスだったりスーツだったり、黒が多い。

 開演15分くらい前かな、ホールへの扉が開きました。わたしたちは前から4番目の列、137と139。うーんどういう番号の振り方だろう。・・・・・・と思ったら、これどうも通し番号みたい。しかもびっくりなのが、推定40席が切れ目なくずーーーっと続いているのです。中間に通路ナシなのです。日本だったら消防法違反なんじゃないだろうか。今回は幕間なしだったからいいけど、毎回出たり入ったりしてたら不便だろうなあ。ちなみにわたしたちの席が真ん中になるのは選んだときから知ってましたが、こんなにオーケストラピットから近いとは思わなかった。指揮者のメータまで実感として3メートルくらいでした。

 さてはじまる・・・・・・よ?
 と思ったら、緞帳のかげから眼鏡をかけた初老の男性が出てきます。そして紙をぴらり、とかしながらスピーチします。たぶん今日のオペラが演奏会形式になってしまったいきさつなんか話してるんだろうなあ、ちょっとでいいから英語でも話してくれるかな最後に。なんて思っていると、
「わざわざやってきたのにこんなものを見せられるなんて! Unfairだ!」
という叫びが2階か3階から! 英語で! そしてどんどん怒鳴っていきます。
 スピーチ者はしばらく気にせず続けていたのですが、あまりに執拗なので
「あえてあなたのことばでお伝えしますが、こ・れ・は立派なワーグナーです!」(以下聞き取れず)
と応酬。それに一部観客が喝采。その後また激した声が続きましたがさすがに
「シーッ」
ととがめられました。
 そんなわけでー、スリリングな幕開けでございました。

『ラインの黄金』、面白かったです。ラインの精や神々が出てくる物語なのですが、舞台はどうやら1920年代くらいに設定されている。だから主要人物は今見てもそんなにおかしくないドレスや燕尾服を着ています。醜い小人族という設定のアルベリッヒも、ブルーのシャツノーネクタイのいかにも労働者階級、という出で立ちです。たしかに舞台装置はなかったけど、劇場の書き割りみたいなので代用されてたけど、これってもともとそんなに豪華なセットではなかったのかもしれないなあ。

 演奏はすばらしかったです。歌もよかった。ほとんど(笑)寝ませんでした。ラスト、ラインの黄金を奪われたままの水の精たちが、天空の城へと退場していこうとする神々に
「返して!」
と歌いかけるところでは、ホール奥・上階の貴賓席とおぼしきところから3人が登場して、すごくよかった。

 カーテンコールにはメータも舞台にあがり、何度も出演者総勢と一緒に手をつないで出てきました。最後の最後は舞台装置が全部とっぱらわれて奥までむき出しになり、さむーい空気が流れこんできました。

 外はまだ雪。ころばないように気をつけて帰りました。そして荷造りをしたのでした。