ことの始まりは、「風呂に入りなさい」という号令だった。
…いや、そもそも少し前から、のんの態度が悪かった。 どうしてだろう? 今日は学校から戻って、Aちゃんのお家で遊ばせてもらって、 17時に帰宅。 その後DSを少しだけして、・・・充分すぎるほどに楽しかっただろうに。
話を戻して。 夕食が済んで、少し経ったので「風呂に入りなさい」と私が言い、 のんがズボンを脱ごうとした…ところ。
「あっ!!それ、むつちゃんの!!」とむつが指をさした。
あっ。
ホントだ。
先日、衣替えをした時に、のんのデニムのズボンが短くなっていた。 のんが気に入っていたデザインだったのだが、 あまりにも裾が上がっていて可笑しかったので、 「もうむつにあげようね」ということにしたのだ。
その時も随分抵抗をしたのだが、最終的に、 「のんには新しいのを買ってあげるから」ということで承知した。
はずなのに。
どうも忘れてしまったらしい。
「えっ!あげてないよ!私のだよ!!」と言い張る、のん。
いやいや、ちがうよ。ほら、あの時こう言って、ここでこうして、 話をして……あげたんじゃない、と言うと 何となく思い出したらしい。
そこで、「あっ、そうだったー!ごめーん!」と ぺろりと舌でも出して笑って済ませれば良いものを。
「お母ちゃんが私(のん)のタンスに入れたから(間違って履いた)じゃん!」 などと言って怒り出す。
なんだと。
いや、ちょっとまて。
ここ数日、洗濯物は自分たちでたたんで、タンスにしまってもらっている。 私じゃないよ。 のんがたたんで、自分でタンスに入れたんじゃないの。
というと、 「ちがう!お母ちゃんが間違った!お母ちゃんが悪い!!」
そこまで言われて黙っていられるか。 こっちもムキになる。
違う。一昨日、こうやって、3人でそれぞれ自分の分をたたんで、 (父ちゃんのは私が畳むのが通例)しまったんじゃない。 と穏やかに言うと、 ……どうやら、またしても思い出したらしい。
またそこで、 「あっ!またわすれてたー!ごめーん!!」などと言う余裕は、 のんにはない。
「ちがうよ!なにいってんの!!お母ちゃんが間違ったくせに!!」
なんだとーーーーーー!!!!!!!
そこからもう喧嘩である。 じゃあもう二度とアンタの服は畳まないから、自分でやれだの、 話を聞く態度が悪いだの、 お互い止まらない。 玄関でバトルが繰り広げられ、 のんは例によって玄関脇の物置部屋に逃げ込んだ。
もういいや。 とにかく、今回は間違いなくのんが悪いんだから、 謝ってくるまでなにもするもんか。
むつだけ風呂に入らせ、寝る支度をさせる。
まぁ、むつが気を遣うこと遣うこと。 やたら「いい子」になって、 「おかあちゃん、こっちやっておいたよ」とか、 「これもよういしなくちゃ」だの、 自分で考えつく限りのことをして、父ちゃんの所にも 言われる前に「おやすみなさい」の挨拶をしに行き、スムーズに寝る。
しばらくすると、のんがまさに「仏頂面」をして リビングに戻って来た。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・ごめんなさい」
どうやら、父ちゃんから言われたらしい。 ふんっ! そんなこと言って来たって、知らんわっ!
…とは思ったが、 とりあえずは風呂に入るように言って、寝かせる。
ああ、疲れた。
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