リフレイン オブ ユー  2009年03月13日(金)
遠い過去を思い出す。剣をすらりと構えて、しっかりを明日を見つめて生きるあなたがいた。たゆたう、うやむやな、曖昧な自我の雲に溺れる私がいた。少しずつ瞼を開きゆく日々の中で、どこまでも世界の真ん中にはあなたがしっかりと立っていた。どうしてそうも強くなれるのだろう。どうしてあなたはそんなに太陽に似ているのだろう。私は無限に問いかけた。一言も言葉にはしなかったけれど。そしてあなたの横顔と後姿を盗み取るようになる。開き切った眼はあなたの光沢を奪い続けるためだけに動いていた。二度と会えなくなる日がいつか来るとは信じなかった。このままあなたをつかず離れずの距離で見つめ続けるだけの毎日が、ずっとそこにあると思っていた。

いつしかあなたはあなたで自我に苦しみ、他者に苦しみ、折り合いをつけて、そして太陽の光を失っていった。必然的なことだった。いつまでも一個の人間が太陽なんかでいられない。誰もが我が我がと言い出して群雄割拠。そして女の子は女性へと成り、日々の体調にだってひどいぐらつきを伴う。光だけで生きていたようなあなたはとても多くの曇り空と陰を宿すようになった。私はひたすら光の記憶を回収した。
今もそれは生きている。過去、と言えば、あなた以外にないぐらいに、とてつもなく強く鋼のように脳裏に突き刺さっている。もう二度とこの世で出会うことはない、純粋な光と熱の記憶。

目を閉じて、リフレインを刻む。あなたが今そこに蘇る。現実離れした強さと明るさに満ちた、太陽のようなあなたを刻む。あなた自身もが失ったであろう、強い光を、今度は私がインストールして使う。リフレインを刻み、今度はそれを私が使う。遠い時代のあなたを、あなたさえも失ったあなたを、今度は私が使う。

あなたは今どうしているだろう? もう二度と太陽には戻らないだろうと思う。いや、そうだと知っている。今度は私が使う。目を開き切って、この足で地上に立たねばならなくなった今、私がそれを使う。リフレインを刻み、誰よりも強く光り輝いていたあなたを、呼び覚ます。




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